ARK Investを率いるキャシー・ウッドが4月29日に実施した取引が注目を集めている。AI向け半導体輸出の不透明感が続く中、彼女はAdvanced Micro Devices(AMD)の株式を7,786株、約75万ドル分追加取得。一方で、長年注力してきた遺伝子編集企業CRISPR Therapeutics(CRSP)の株式を9万2,782株、約351万ドル分売却した。

このCRSPの売却はARKの全ETF中で最大規模となり、28日の売却に続く動きである。ただし、CRSPはなおARKK内で第7位の保有比率(4.86%)を維持している。ウッドはまた、Shopifyや他のバイオ企業にも投資を拡大する一方で、Metaの保有比率をさらに削減した。

ウッドの取引は短期的な市場動向を超えた戦略的なシフトの可能性を示唆しており、半導体・バイオ分野における選別投資の方向性を読み取る手がかりとなる。

半導体規制の不透明感下でAMDへの強気継続、ARKの投資姿勢が浮き彫りに

キャシー・ウッドが率いるARK Next Generation Internet ETF(ARKW)は、4月29日にAdvanced Micro Devices(AMD)の株式を7,786株、約75万ドル相当で追加取得した。AI半導体を巡る米国の輸出規制が懸念される中でのこの動きは、同社への信頼が揺らいでいないことを示す。今回の買い増しにより、AMDはARKW構成銘柄の第13位となり、保有比率は1.82%に達した。ARKは2024年にも同様の局面でAMD株を積極的に取得しており、長期視点での成長期待を維持している可能性がある。

一方で、TipRanksのデータによれば、AMD株は22件の「買い」評価と12件の「ホールド」によりモデレート・バイ(中立的買い)に分類されており、目標株価は平均139.13ドル。現在価格から見た上昇余地は約44.8%と算定されている。ただし年初来での株価は20.5%下落しており、短期的には厳しい値動きが続く。AI分野での競争が激化する中、同社がNVIDIAに続く立ち位置を確保できるかが今後の焦点となる。

ウッドの行動は、目先の規制や株価下落よりも、構造的な成長力を評価している姿勢と読み取れる。ただし米中間の技術摩擦が今後一段と強まる可能性もあり、過度な楽観には慎重な見方も必要である。

 

CRISPRをARKが大量売却 長年の「本命」銘柄に何が起きたのか

ARK Innovation ETF(ARKK)が4月29日に行った最大規模の取引は、CRISPR Therapeutics(CRSP)の株式92,782株、約351万ドル相当の売却であった。前日28日にも同社株の売却を実施しており、2日連続での大規模な縮小となった。これによりARK内での保有比率は変動が生じるものの、CRSPは依然としてARKKの第7位(4.86%)に位置づけられている。かつて遺伝子編集分野のフラッグシップとして位置付けていた銘柄に対し、ウッドの評価が変化した可能性がある。

CRSP株はTipRanksによれば、モデレート・バイに分類されており、平均目標株価は71.89ドル。現在価格から見た上昇余地は92.2%とされるが、年初来では5%近い下落を記録している。株価面での軟調さは、同社の事業進捗や規制環境、競合動向に対する市場の慎重姿勢を反映していると見られる。

ARKが保有比率の上位に維持しつつも、売却を進めた背景には、バイオテクノロジー分野の成長ポテンシャルを再評価する動きがあるとも考えられる。過去に一極集中で評価されたテーマ銘柄に対して、より分散的な構成への移行を試みている段階とも捉えられる。市場環境の変化に伴い、テーマ投資にも柔軟な再編が求められている。

 

メタやShopifyの調整とバイオ新規銘柄の組入れ ポートフォリオ多角化の狙い

今回の取引で注目すべきもう一つの側面は、ウッドがメタ・プラットフォームズ(META)の保有比率を引き続き削減しつつ、Shopify(SHOP)や複数のバイオテクノロジー企業の株式を買い増している点である。Shopifyは前日比で3.96%下落する中での取得であり、下値でのエントリーを図った動きと考えられる。一方、メタは引き続きリストラや収益構造の変革を進める中で、ARKがリスク管理を優先し調整に入ったとの見方もある。

このような動きは、ARKのポートフォリオ構成が単一セクターや大型銘柄に偏重することを回避し、中小型の成長企業に再び重点を移している証左とも言える。特にバイオ関連銘柄への関心が再燃しており、再生医療や個別化医療といった新技術分野へのシフトが伺える。Shopifyへの投資は、Eコマースの再加速への布石とも読めるが、金利環境や消費者行動の変化に強く影響されるため、短期の値動きは不安定さを残す。

多角的なポートフォリオ戦略は、市場の不確実性が高まる中でリスク分散の基本である。ウッドの一連の調整は、テーマ性を保ちつつ柔軟性を兼ね備えた構成へと転換しつつある動きと捉えるべきであろう。

Source:tipranks.com