アップルの3月期決算発表を控え、ループキャピタル、バークレイズ、レイモンドジェームズの各アナリストが株価目標を引き下げた。背景には、トランプ政権による関税強化とそれに伴う価格上昇リスク、iPhoneやAirPodsの需要減速、Siriを含むAI導入の遅れなどがある。
具体的には、バークレイズは2025年後半の業績懸念から目標株価を173ドルに下げ「売り」を継続、他2社は「ホールド」「アウトパフォーム」を維持しつつも8〜10%のEPS減少リスクを指摘した。決算直前であるにもかかわらず、株価は一時下落後に0.6%反発し212.50ドルで引けた。
市場ではAI関連サービス成長やエコシステムの強さに期待が残る一方、関税がもたらす収益圧迫への懸念が色濃く、目先の株価は関税関連の報道次第で不安定な展開が予想される。
アップル株に対する3社の評価変化とその根拠

ループキャピタル、バークレイズ、レイモンドジェームズの3社は、アップルの2025年3月期決算発表を前に相次いで目標株価を引き下げた。ループキャピタルのアナンダ・バルアは、iPhoneの供給網データをもとに230ドルから215ドルへ引き下げつつ、ホールドを継続。バークレイズのティム・ロングは197ドルから173ドルへと大幅に下げ、「アンダーウェイト(売り)」を継続した。レイモンドジェームズのスリニ・パジュリも250ドルから230ドルへと引き下げつつ、「アウトパフォーム」の評価は維持している。
背景には、トランプ政権下で発動される新たな対中関税の影響があるとされる。ロングは、関税の本格化前に在庫調整が行われたため3月・6月期は「問題ない」としながらも、年後半にはiPhoneやAirPodsの需要鈍化が鮮明化すると指摘。AI機能の目玉である「Apple Intelligence」の導入遅れも懸念材料として挙げている。一方で、パジュリは関税による価格転嫁により、EPS(1株あたり利益)が8〜10%減少する可能性を示唆している。
アップルに対する評価は分かれているが、いずれのアナリストも短期的な業績見通しに対して慎重な姿勢を示しており、株価は決算内容と関税関連ニュースに大きく反応する不安定な局面を迎える公算が大きい。
AI導入遅れと関税コストが業績に与える複合的影響
2025年下半期に向けたアップルの懸念材料は、単なる関税の影響にとどまらない。AI関連機能である「Apple Intelligence」の市場投入の遅れが、iPhoneの買い替え需要を先延ばしする要因になるとの指摘が出ている。ティム・ロングによれば、Siriの強化などAI機能の本格展開が遅れることで、消費者が新機種への移行を急がなくなり、販売台数が伸び悩む可能性があるという。
さらに、AirPodsやApple Watchなどのウェアラブル製品は、景気の影響を受けやすい嗜好性の高い製品群である。ロングは、2025年後半にこれらの出荷台数も減少するとの見立てを示しており、アップルにとっては複合的な逆風が吹いている構図となる。レイモンドジェームズのパジュリは、関税転嫁による価格上昇が購買意欲をそぐことで、一部需要が蒸発するリスクもあると警告した。
たとえ高収益なサービス事業の成長が継続していても、主力のハードウェア製品群の失速は全体業績に大きな影響を与えかねない。AIの導入時期と価格戦略が、今後の株価と業績に及ぼす影響は慎重に見極める必要があるだろう。
Source:investors business daily