テスラ株は第1四半期決算での業績悪化にもかかわらず反発傾向を示しており、注目は6月に予定されるロボタクシー事業の開始とイーロン・マスクがトランプ政権の政府業務から距離を置く姿勢に移っている。特にオースティンでの無人運転型Model Y導入や廉価版EVの投入計画が、将来の成長期待を支えている。
一方で、ブランドイメージの毀損や政治的対立の余波は国内外で尾を引いており、欧州やカナダでは報復的なEV補助金除外措置も浮上している。こうした外的要因が短期的な収益圧迫につながる可能性は否定できず、アナリストらも2025年の利益予想を引き下げている。
それでもアーク・インベストのキャシー・ウッドなど、一部投資家はロボタクシー事業の長期的価値を評価し、テスラの企業価値の9割が自動運転に帰属すると見て強気姿勢を保つ構えである。
ロボタクシー計画と廉価EV投入が市場の期待を下支え

テスラは第1四半期決算で利益が40%減少し、売上も前年同期比9%減となる厳しい結果となったが、投資家の関心は業績よりもロボタクシーと新たな低価格EVに集中している。6月にオースティンで開始予定の「完全自動運転ライドシェアサービス」はModel Yベースでの実装が見込まれ、同社は「無監督型」の自動運転が可能になるとの見解を示している。並行して、既存ラインで生産可能な廉価版EVの投入も明言しており、これが中長期の販売ボリュームと普及拡大を後押しする構えだ。
アナリスト各社もこの戦略を評価しており、Piper Sandlerはロボタクシー構想と新モデルが「ベア派の動きを抑える要因になる」と指摘した。アーク・インベストは、将来的にテスラの企業価値の90%がロボタクシー事業に起因すると見積もり、株価目標を2,600ドルとする強気な見方を継続している。ただし、初期段階での台数は「10~20台」と控えめな見通しであり、技術的・規制的な課題の克服には時間を要する可能性もある。
過去の華やかなイベントと比して、今回のロボタクシー発表には「中身の乏しさ」が指摘されており、内容が市場の期待水準を上回ったとは言い難い。今後の実証実験と商用展開が信頼回復の鍵を握ることとなる。
イーロン・マスクの政治距離化とブランド毀損の修復課題
イーロン・マスクは5月よりトランプ政権下の「政府効率省(DOGE)」での活動を縮小し、テスラに注力すると宣言した。これにより投資家は「マスクの政治色」が企業価値に及ぼす悪影響が緩和されると見ている。実際、Wedbushのダン・アイヴスは「この一手がテスラの物語の転換点になる」と評しており、マスクの発言に市場が一定の安心感を抱いたことが示された。
しかし、ブランド毀損の影響は根深い。YouGovとYahoo Newsの調査では、67%の米国人がテスラを選択肢に入れておらず、そのうち37%が「マスクが理由」と回答している。CNBC調査でもマスクへの好感度は民主党支持層でマイナス82ポイントと壊滅的で、ブランドイメージの回復には時間がかかる状況である。
加えて、米国の対外政策のあおりを受け、カナダでは約4,300万ドル分のEV補助金が凍結され、英国でもテスラ支援の見直しが検討されている。政治的距離を取る姿勢は企業戦略として理に適っているが、一連の対応が十分な効果を発揮するかは依然として不透明だ。
2025年の利益見通し引き下げと株価動向の不安定さ
テスラ株は第1四半期決算後、5.3%上昇するなど一時的な回復を見せたが、2025年の通期利益予測は急速に下方修正されている。FactSetによると、決算前にはEPS成長率が6.6%と予測されていたが、決算発表直後には15%下方修正され、現在は前年比9%減となる2.20ドルがコンセンサスである。これは3年連続の減益を意味し、過去の高成長神話からの転換点に差し掛かっているとも言える。
Q1では規制クレジットを除いた営業損失が明らかになり、粗利益率は2012年以来最低水準の12.5%まで低下した。加えて、Q4の利益修正やビットコイン資産の評価損による純利益の減少など、財務的な弱点も露呈している。
株価は3月11日を底に反発基調にあるが、年初来で依然27%下落しており、S&P500構成銘柄の中でも特にパフォーマンスが劣後している。高ボラティリティを示すATR(21日平均真の変動幅)は8.86%に達しており、短期売買主導の展開が続く中、持続的上昇には明確な材料が必要である。今後はロボタクシーの実用化が想定通り進むか否かが、株価回復の分水嶺となるだろう。
Source:investors business daily