OpenAIのサム・アルトマンが支援するWorldcoinは、米国での正式ローンチ後、WLDトークンが7日間で19.78%上昇するなど注目を集めている。デジタルIDとAIの融合を目指す構想が評価される一方で、上位10ウォレットによる保有が依然77.62%を占めており、極端な集中構造が懸念を呼んでいる。加えて、暗号通貨調査員ZachXBTによる過去の詐欺疑惑も再び脚光を浴び、投資判断においては慎重な視点が求められる局面にある。
米国上陸で注目集めるWorldcoinの価格動向と背景

Worldcoinは2025年5月1日に米国で正式にサービスを開始し、WLDトークンは7日間で19.78%の価格上昇を記録した。ローンチ直後には1.03ドルから1.16ドルまで上昇し、その後1.08ドルまで下落するも、日次ベースで4.31%のプラスとなった。
この急騰は、AI時代におけるデジタルIDの確立を目指すWorldcoinの構想に対する期待の表れである。Worldcoinは、生体認証を用いた本人確認とユニバーサル・ベーシック・インカム(UBI)の実現という2つの野心的目標を掲げており、特に米国市場ではこれまで以上の関心を集めている。
しかしながら、この価格上昇は短期的な投機の影響を受けている可能性も否定できない。特に上位ウォレットによる保有率の高さや、過去に投機的な取引が指摘されてきた背景を踏まえれば、今回の上昇は必ずしも市場の健全な評価とは言い難い。また、WLDの流動性が依然として限定的である点も、価格変動の振れ幅を大きくしている要因と考えられる。価格上昇という表層的な事象の背後には、依然として根本的な構造課題が存在している。
トークン集中と運営主体への不信が与える構造的リスク
Worldcoinを巡る最大の懸念点は、供給トークンの集中構造にある。2023年8月時点で全供給量の98%を10のウォレットが保有していたが、今回の米国ローンチ時点でも依然として77.62%を上位10ウォレットが保有していることがCoinCarpのデータで確認された。
さらに、これらのウォレットはいずれも暗号資産取引所に属しておらず、最大でもBinanceが0.58%を保有するに過ぎない。この事実は、WLDの市場流通性の欠如を示すものであり、価格形成がごく一部の大口保有者によって左右され得るリスクを内包している。
また、著名な暗号通貨調査員ZachXBTは、2023年7月にこのプロジェクトを「強気相場最大の詐欺」と断じ、運営チームによる不透明な資金運用に疑念を投げかけていた。こうした背景は、Worldcoinの構想そのものの評価とは別に、投資対象としての信頼性に大きな影を落とす。AIやデジタルIDといった先進テーマを掲げる一方で、根幹のガバナンス体制が市場に対する透明性と説明責任を果たせていない現状では、安定的な資産形成を求める投資家層にとっては受け入れがたい側面も残る。
Source:Finbold