米パランティア・テクノロジーズが開発したAI搭載の戦術情報収集車両「TITAN」が、米陸軍による最新の評価報告で最上位のプログラムの一つに選ばれた。TITANは人工衛星や航空機など複数の情報源からデータを統合・分析し、戦場での目標補足を支援する次世代型プラットフォームである。
2023年に総額1億7840万ドルの契約により試作機10台の開発が決定し、既に3台を納入済み。実戦的な運用試験と本格配備判断は2027〜2028年を想定している。
TITANが示した米陸軍における非伝統企業の新たな存在感

米陸軍が2024年4月に議会へ提出した報告書において、パランティア・テクノロジーズが開発する戦術情報収集車両「TITAN」は、全プログラム中でも上位の成果を挙げた5件のひとつとして評価された。この車両は、人工知能と機械学習を活用し、戦場における目標へのBeyond-Line-of-Sight(視線外)支援を実現することを目的とした次世代型の情報プラットフォームである。TITANは衛星、航空機、高高度センサー、地上データを統合し、即時に戦術判断が可能となる能力を持つ。
本件では、RTXやノースロップ・グラマンなどの防衛大手を差し置いて、非伝統的なソフトウェア企業であるパランティアが主契約者となった点が特筆される。報告書でも「ソフトウェア中心でありながらハードウェア依存の強いプロジェクトにおいて、非伝統企業が主導を握った成功事例」とされている。これは、国防調達の構造において新興企業の影響力が高まりつつある兆候とも読み取れる。とはいえ、このような傾向が今後の装備開発全体に波及するかは、現時点では不透明である。
AI搭載型戦術車両の実用化に向けた工程と課題
TITANの開発は2023年3月、米陸軍によってフェーズ3の契約が締結されたことで本格化した。契約総額は1億7840万ドルで、試作機10台の製造が含まれる。すでに3台が納入されており、年末までにさらに4台、2026年3月までに残る3台が供給される予定である。システムは軽量産業用トラックと同サイズのトレーラーで構成され、衛星通信機器やバックアップ電源も搭載。これにより、複数の情報源からのリアルタイムなデータ収集と分析を実行可能にしている。
現在はプロトタイプの評価段階にあり、陸軍は今後の調達数については「試験運用を通じて判断する」としている。正式な戦力配備は2027年から2028年にかけての見通しとされるが、実戦投入前には戦闘環境を模した実地試験と評価を経る必要がある。AIを中核としたこの新型システムは、情報の正確性やリアルタイム性に加え、現場での耐久性や兵士の運用習熟など複数の要素を満たす必要があり、技術革新の期待と現実的な運用課題の間にあるギャップを慎重に埋めていく必要がある。
防衛産業における協業体制の変化と競争環境の再編
TITANプロジェクトには、パランティアの主導のもと、アンドゥリル・インダストリーズやノースロップ・グラマン、L3ハリス・テクノロジーズといった複数の企業が協力企業として関与している。従来のように1社がシステム全体を担うのではなく、各社の強みを持ち寄る形での分業体制が取られている点が特徴的である。この構造は、AIや宇宙通信など異分野の技術融合が求められる現代の防衛開発において、複数のスタートアップや非伝統企業を含む連携が主流となりつつあることを示唆している。
一方で、従来型の防衛大手であるRTX(旧レイセオン)などがこの契約を獲得できなかった背景には、従来型の装備中心の提案では次世代の要件を満たしきれないという構造的課題がある可能性もある。今後、AIやセンサー統合技術を活用したプラットフォームの需要が拡大する中で、防衛産業の競争軸が再定義され、特にソフトウェアとデータ分析力が優位性を決める要素としてより重視される展開が考えられる。業界構造は静かにだが確実に変わりつつある。
Source:msn