CoinGeckoの調査によれば、2021年以降に登場した約370万の暗号通貨のうち、52.7%がすでに消滅している。特に2025年第1四半期には182万件超のプロジェクトが姿を消し、前年全体を上回る規模で失敗が加速している。

背景には、トランプ前大統領の再登場による市場の動揺、そして「pump.fun」に代表されるミームコイン・プラットフォームの氾濫があり、短命で脆弱なトークンの大量発行が淘汰を早めた。インフレ再燃やリスク資産離れも影響しており、個人投資家主導の市場における暗号通貨の脆弱性が一層際立っている。

ミームコインとプロジェクト乱立がもたらした市場の質的劣化

CoinGeckoのレポートによれば、2021年以降に誕生した370万件超の暗号通貨のうち、実に52.7%が既に市場から姿を消している。とりわけ2025年第一四半期のデータは深刻で、1,821,549件のプロジェクトが消滅しており、これは前年全体の消滅件数を既に上回る水準である。短命なプロジェクトの大量発生の背景には、「pump.fun」などのプラットフォームによってトークン作成のハードルが極端に下がった構造的要因がある。

Binanceの調査によれば、ミームコインの97%が最終的に消滅しており、娯楽的な側面を帯びた仮想通貨が投資対象として機能不全に陥っていることが示唆される。また、単なる価格操作を狙った仕掛けも多く、持続的価値を提供する設計思想が希薄なままリリースされるケースが相次いでいる。こうした環境はプロジェクトの信用力を損ない、健全な資本の流入を阻む要因となっている。

新興プロジェクトの量的膨張は市場の賑わいを装う一方で、全体の品質低下を招いている。持続可能性やユースケースに対する市場の評価軸が曖昧になれば、淘汰のスピードは今後さらに加速する恐れがある。市場の再構築には、技術的な革新だけでなく、投資家保護やプロジェクト精査のための制度設計が急務である。

政治リスクとマクロ経済の不安定化が招いた資金流出

2025年に入ってからの暗号通貨の失敗件数の増加は、政治的混乱やマクロ経済の揺らぎとも密接に関連している。特に、ドナルド・トランプ前大統領の復権に伴う米国市場の不確実性は、投資家心理に深刻な影響を及ぼしている。これにより、暗号通貨のようなボラティリティの高い資産から資金を引き上げ、現物資産や法定通貨にリスクヘッジする動きが活発化している。

近年では、暗号通貨がインフレ耐性のある資産と見なされる一方で、金の価格上昇がビットコインに対する代替的価値保存手段としての信認を再度浮上させている。こうした相対的な評価の変化も、暗号市場からの資金流出に拍車をかけている。とくに個人投資家が主導する市場では、不安要因への感応度が高く、価格下落に連動して連鎖的に市場離脱が進む傾向が強い。

このようなマクロ要因の影響を過小評価すれば、暗号資産全体の信頼性に対する誤った楽観が生まれかねない。投資家が求めているのは単なる価格上昇ではなく、価値の安定性と政策的な整合性である。今後の市場の安定には、暗号通貨が経済システムの一部として受け入れられるだけの政治的・法制度的裏付けが不可欠である。

Source:Finbold