米中関係の緊張や関税政策が市場を混乱させる中、ウォーレン・バフェットの選択が際立っている。彼が初期から巨額を投じた中国の電気自動車メーカーBYDの株価が年初来で40.4%、過去1年で73%も上昇し、同業他社を凌駕する成績を示している。

垂直統合によるコスト削減や欧州展開の加速に加え、2024年Q4の売上高52.7%増、純利益73.1%増という実績が高評価につながっている。バリュエーションも依然として過熱感を欠き、アナリスト全員が「強い買い」を提示。123ドルの目標株価に向けて、バフェット流の長期視点が改めて注目を集めている。

バフェットの資産増加とBYDの株価急騰が示す市場への対応力

2024年4月、世界市場がドナルド・トランプ前大統領の通商政策を受けて急落した際、多くの富豪が資産を大きく減らす中、ウォーレン・バフェットだけが資産を増加させた点は特筆に値する。年初からの資産増加額は115億ドルに達し、混乱する市場環境下での逆行高を実現した。

その原動力の一つが、中国の電気自動車メーカーBYDへの早期投資である。1株1.02ドルで取得したBYD株は、現在では22.4億ドルにまで膨らみ、長期目線での集中投資の妙を証明する結果となっている。

BYDの株価は2024年の初めから40.4%上昇し、過去52週間では73%の上昇率を記録している。3ヶ月間での上昇率は36%に達し、同期間のS&P500指数が6.7%下落したことと対照的である。こうした成績は、同社がグローバル供給網を自社で統括する垂直統合モデルを確立していることや、欧州市場での工場拡張を積極化させていることに支えられていると考えられる。

このような市場環境下で、短期的な騒乱に動じず本質的価値を見極める姿勢が功を奏した形であり、バフェットの手法が依然として有効であることを明示している。外的要因に影響されやすいEVセクターにあって、BYDの成長性を的確に見抜いた判断力が、他の投資家との差異を際立たせた。

急成長を遂げたBYDの決算と今後の展開

BYDは2024年第4四半期において、売上高が前年比52.7%増の379億ドル、純利益が73.1%増の21億ドルという圧巻の業績を発表した。主因は新エネルギー車(NEV)の販売増であり、四半期中に150万台を売り上げ、前年比61.3%の増加を記録した。これにより営業キャッシュフローは106億ドルに達し、年間フローの半数以上をこの1期で稼ぎ出している。

また、2025年第1四半期の予想も非常に強気で、純利益は85億~100億元(約11.8億~13.9億ドル)を見込んでおり、前年同期比で最大118.9%の増益となる可能性がある。EPSも前年の1.57元から2.91~3.42元へと大きな伸びが想定されている。こうした数字は、BYDがEV市場で単なる競争者ではなく、リーダーとしての地位を築いていることを裏付ける。

これにより、同社の財務健全性と成長戦略の確かさが市場に再評価されている。トルコやハンガリーに加え、ドイツにも工場を新設することで欧州市場の存在感を強めており、グローバルプレイヤーとしての体制が着実に構築されている。今後の市場変動においても、同社が収益の源泉を多様化させる方向で動いていることが安定成長を支える鍵となるであろう。

バリュエーションとアナリスト評価が示す投資妙味

BYD(BYDDY)の株価は過去の急騰にもかかわらず、現時点のバリュエーションは依然として魅力的である。予想PER18.62倍、売上高倍率1.33倍という水準は、セクター平均と比べてやや高めながら、同社の過去5年平均に照らせば依然として割安とされる水準である。この価格水準での取引は、急成長を遂げる企業に対して過度な過熱感がないことを示しており、今後の上値余地を残している構図である。

アナリスト6名全員がBYDに対して「強い買い(Strong Buy)」評価を付けている点も注目される。目標株価は平均123ドルとされており、現在の水準からさらに30%の上昇余地があると見込まれている。こうした評価は、短期的な株価動向よりも、中長期的な企業価値の拡大を見込んだものと解釈される。

また、同社が計画している最大600億元の資産運用商品への投資も、余剰資金の有効活用を通じた財務戦略の巧みさを反映している。成長加速とともに収益性と資産効率の向上も視野に入れており、バフェットが注目する「総合的な企業価値」の向上に資する動きと見るべきである。短期の値動きにとらわれず、構造的な成長を志向する投資家にとってBYDは依然として注目に値する存在である。

Source:Barchart