Nvidiaのジェンセン・フアンCEOは、中国のAI技術が米国に急速に迫っていると指摘し、ファーウェイを「世界屈指の強敵」と評した。この発言は米中間の技術摩擦が激化する中で行われたものであり、Nvidiaは中国向けチップ輸出に対する新たなライセンス要件により、第1四半期だけで55億ドル超の収益減少リスクを抱えている。

一方で、バークレイズをはじめとする複数のウォール街アナリストは、同社の成長性と政策転換の可能性に注目し、NVDA株に対して強気の評価を継続している。中長期的には、AI分野での競争優位と収益拡大の見通しが相場の支えとなる可能性がある。

中国AI台頭とフアン発言が示す地政学的リスクの増大

ジェンセン・フアンは、2024年5月のテックカンファレンスにおいて、「中国はAIにおいて米国に肉薄している」と明言し、深圳のファーウェイを「最も手強い技術企業」と評価した。この見解は、単なる技術的な警鐘にとどまらず、米中間のAI覇権争いにおける地政学的緊張の象徴とも捉えられる。

現在、Nvidiaは米国政府による対中輸出規制の影響を受けており、H20チップの輸出に新たなライセンス取得が必要となった。これにより、同社は第1四半期だけで55億ドルを超える収益損失の可能性に直面している。

このような制限措置は、中国市場を中心に業績を支えてきたNvidiaにとって構造的な逆風となり得る。にもかかわらず、株価は一時的に5%上昇しており、これは市場がフアンの発言を短期的な警告以上に、長期的なAI市場の成長性と捉えた結果とも読める。一方で、米中間の技術覇権を巡る攻防は激化の一途をたどっており、今後もNvidiaはその最前線に立たされ続けることが避けられない情勢である。リスク要因としての地政学的圧力は、AI関連株にとって中長期的に不確実性の根源となり続けよう。

バークレイズが示す強気継続の根拠と業績見通し

Nvidiaに対する米政府の規制強化にもかかわらず、バークレイズは同社株に対して「買い」評価を維持しており、目標株価を155ドルと設定している。現在の株価水準から35%以上の上昇余地を見込んでいる点に注目すべきである。その理由の一つが、在庫減損処理を通じた中国市場からの事実上の撤退姿勢である。これにより、将来的な輸出制限の影響を織り込んだ経営判断がなされているとの評価がある。また、トランプ政権による輸出政策の見直し報道も、将来的な規制緩和の可能性を市場に意識させている。

さらに、Barchartが報じたところによれば、同社の今四半期の1株当たり利益は0.82ドルに達する見込みで、前年比で41%以上の増益となる。この数値は短期的課題が残る中でもAI需要が確実に利益に結びついていることを示す材料である。株価が年初来で約16%下落している中、ファンダメンタルズが崩れていないことは、投資家にとって再評価の契機となり得る。技術革新の中核に位置するNvidiaにとって、成長機会とリスク要因の峻別が今後の株価動向を大きく左右することは間違いない。

ウォール街のコンセンサス評価と2025年への期待

Nvidiaに対する評価は、バークレイズのみならず複数のウォール街アナリストによって高水準で維持されている。現在のコンセンサスは「強く買い」とされ、平均目標株価は166ドルに設定されている。これは現在の株価から45%以上の上昇を示唆する水準であり、短期的な市場不安を上回る成長期待の高さを物語っている。特に、生成AIやデータセンター向けGPU需要が中長期的に拡大すると予想されている中で、同社がその供給インフラの中核を担っている点は無視できない。

一方で、市場全体の不透明感が根強く、FRBの政策動向やマクロ経済の不確実性は引き続き株価のボラティリティ要因である。Nvidiaのような高成長株は、金利動向や政策変化に敏感な性格を持つため、投資判断には冷静なバリュエーション分析と政策リスクの織り込みが不可欠である。

2025年を見据えた場合、技術主導の成長に賭ける投資家にとって、同社の持続的競争優位性と規制環境の行方が最大の注視点となるだろう。今後の展開次第で、Nvidiaは再び市場の主役に返り咲く可能性を秘めている。

Source:Barchart.com