Appleは2025年第1四半期に世界で5,500万台のiPhoneを出荷し、前年同期比13%の成長を記録した。これは主に中国外での生産拡大、特にインド生産の急増と、関税リスクを先読みした在庫確保策が功を奏した結果である。世界市場シェアは19%に上昇し、横ばいのスマートフォン市場においてAppleの存在感を強調した。
市場全体ではSamsungが6,050万台出荷で20%のシェアを維持するが、成長率はわずか1%と低調である。米国市場ではAppleの販売が12%増加し、新興市場における拡大も寄与した。第1四半期末時点で、インドは標準モデルだけでなくProラインの組立も開始し、Appleのサプライチェーン戦略の中核を担い始めた。
この動きは、地政学的リスクやコスト上昇に対する長期的な防御策でもある。Android陣営が在庫調整や価格圧力に直面する中、Appleはプレミアム市場での優位を維持し続ける可能性が高いとされる。
Appleが記録した世界市場シェア19%の背景

Appleは2025年第1四半期、前年同期比13%増の5,500万台を出荷し、世界市場シェアを16%から19%に拡大させた。Canalys(現Omdia)によれば、世界全体のスマートフォン出荷はわずか0.2%の増加にとどまった中で、Appleの成長は際立っている。
この急成長は、米国市場での販売増加とアジア太平洋新興市場の需要によって支えられた。特に米国では、スマートフォン販売全体が12%増加し、その多くがApple製品によるものであった。一方、Samsungは同期間に6,050万台を出荷し、シェア20%で首位を維持したが、成長率は1%と低迷した。
Appleは競争が激化する中で供給の確保を最優先課題とし、関税リスクを先取りして在庫を積み増す戦略を採用した。この結果、主要なAndroidベンダーが在庫削減を進める間もAppleは積極的な市場攻勢を続け、差を縮めた。この事実は、Appleの供給網と販売戦略がいかに緻密かを示すものである。
成長を支えたのは単なる数量の増加ではなく、プレミアム市場での競争力にあったと考えられる。価格帯の高いモデル群での支持が厚く、利益率の高い分野で強さを発揮したことは、Appleが競合他社と一線を画す重要な要因となったと見られる。
インド拠点拡大が示すAppleの供給戦略の転換
Appleは第1四半期末時点で、標準モデルのiPhone 15および16に加え、16 Proラインのインド生産を本格化させた。従来、米国向け製品の多くは中国製であったが、Appleはここで地政学的リスクや関税問題を回避する動きを強めた。Canalysは、このインドシフトは単なる短期の危機対応ではなく、長期的なコスト管理と供給安定を見据えた布石と分析する。
インド生産の拡大は単に生産地の変更にとどまらず、地域サプライチェーンの多様化と強化を伴う。Appleは現地の組立能力を高めることで、今後の市場変動や政策変更にも柔軟に対応できる体制を整えている。この戦略は、Appleが世界のどの市場にも影響されにくい堅牢な立場を築こうとしていることを示唆する。
一方で、こうした動きは必ずしも完全な成功を保証するものではない。インド市場自体の需要低下や、ラテンアメリカ、中東市場の縮小など、地域によっては厳しい状況が続いている。Appleの試みは、グローバル全体での供給の最適化を追求するものであるが、各地域での経済・政治の不確実性がその成否を左右する可能性があることも念頭に置く必要がある。
プレミアム市場での優位と競合の苦戦
2025年半ばまでの米国市場は、在庫調整や消費者心理の弱さによる不安定さが続くとCanalysは予測する。この中でAppleは、早期のインド生産拠点確保やプレミアムモデル市場での地位によって優位性を維持している。特にエントリーレベル製品の価格上昇リスクを抱えるAndroid陣営は、Appleに比べて利益率の確保が難しく、圧力を強められている状況だ。
Appleの強みは単に台数の多さではなく、利益率の高い高級モデルで確固たる地位を築いている点にある。供給側の戦略的勝利と高いブランド力が相まって、競合他社が価格設定や在庫管理に苦慮する中でも、Appleは着実に市場支配力を強めている。
ただし、今後もこの優位が続くかは確定的ではない。市場全体の買い替えサイクルの減速、世界各地の需要減少といったマクロ環境の変化は、Appleにとっても逆風となる可能性がある。安定の裏側には、常に外的リスクが潜んでおり、Appleの市場戦略は慎重さを欠いてはならない。
Source:The Mac Observer