2023〜2024年の仮想通貨バブル崩壊後、一時的に沈静化したグラフィックスカードの価格が2025年に入り再び上昇傾向に転じた。NvidiaのRTX 50シリーズは、在庫不足と転売ヤーの暗躍によりMSRPではほぼ購入不可能な状態で、RTX 40シリーズも旧型ながら高止まりが続く。

AMDのRX 9000シリーズも性能の高さが仇となり価格がじわり上昇。一方、旧世代のRX 7000シリーズは割引販売が目立つが、仕入れ価格との乖離に注意が必要だ。Intel Arcも価格上昇の波に巻き込まれつつあり、一部製品は50%以上のプレミア価格を記録している。

全体的に、市場は過熱気味であり、最適な価格での購入は極めて困難な状況。小売各社のディールを細かくチェックする眼力が問われる“目利き時代”に突入した。

RTX 50シリーズに見る高性能GPU市場の供給構造と価格形成の変容

Nvidia GeForce RTX 5070をはじめとするRTX 50シリーズは、2025年においても強い需要を維持しているが、その入手難易度は高まり続けている。背景には、需要過多と在庫制限の双方が複雑に絡み合う供給構造のひずみがある。在庫の枯渇は単なる物流の問題ではなく、サプライチェーンの各段階における需給調整の不全が要因とされており、転売業者の存在が需給バランスを一層不安定にしている。

価格は公式の希望小売価格(MSRP)を著しく上回り、正規ルートでの入手が困難となったことで、二次流通市場が実質的な価格決定権を握る状況に移行しつつある。TechRadarが報じた通り、米国における複数の小売業者では、定価販売の実績がほぼ皆無であり、市場価格は実需を超えて投機的水準に達している。

このような状況下において、高性能GPUはもはや単なる家電ではなく、準資産的な位置づけを持ち始めた。価格の硬直化と過熱が続く限り、入手のタイミングと手段がコストに直結するため、合理的な購買判断が問われる局面となる。

AMDとIntelの戦略的価格設計と市場への影響

AMDはRadeon RX 9000シリーズにおいて競争力のある価格と性能を両立し、Nvidia製品に対する実質的な選択肢を提示している。RX 9000はそのスペックと価格のバランスが高く評価され、熱心なユーザーからの支持を得ているものの、需要の高まりに比例して価格も上昇している。これに対して旧世代のRX 7000シリーズは、在庫処分に向けた割引施策が進められており、価格競争の軸が明確に二極化している。

一方、Intel Arcシリーズは依然として市場での存在感が希薄であるが、Arc B580に関しては希望価格を大幅に上回る400ドル前後で取引されており、例外的な高騰が見られる。全体としてはNvidiaやAMDほどの需給圧力は観測されていないが、一部モデルにおいては限定的な供給がプレミアム価格を誘発していることが確認されている。

各社の価格設計には明確な差異が存在し、AMDは合理性を重視し、Intelは市場開拓を模索する過渡期にある。今後の市場においては、性能と価格の均衡だけでなく、流通戦略や在庫調整の巧拙が各ブランドの競争力を左右する決定要因となるだろう。

Source:TechRadar