AMDが次期GPU「RX 9060 XT」を16GBおよび8GBの2モデルで計画しているとの報道が浮上した。主要な供給は16GBモデルに集中し、8GB版は主にプリビルドPC向けの用途にとどまる可能性がある。

特に8GBモデルについては、NVIDIAのRTX 5060 Ti 8GBが抱えた性能面での課題と市場評価の低さを背景に、消費者向け展開には慎重な姿勢が見られる。Benchlifeによると、すでに一定量の8GB版が生産段階にあるとされ、限定的な流通が見込まれている。

正式な発表は2025年5月21日のComputexで行われる見通しであり、AMDはこの場でゲーム関連を含む新製品を披露する意向を明らかにしている。

RX 9060 XTの8GB版は限定流通の見込み 主戦場はプリビルドPC市場か

BenchlifeおよびWccftechの報告によれば、AMDの次世代GPU「RX 9060 XT」は8GBおよび16GBの2構成で展開される可能性があるが、8GBモデルは一般向け小売市場では極めて限定的な流通にとどまるとみられている。

これは、RTX 5060 Tiの8GB版が批判を受けた前例と同様の道を辿るリスクを回避する狙いと解釈されている。8GB版は、PCビルダーがコストを抑える目的で採用するケースが想定されており、実際の搭載先は主に低価格帯のプリビルドPCとなる見通しである。

一方で、16GBモデルは性能・容量の両面において明確な優位性を持ち、ハイエンドおよびミッドレンジ市場への訴求が期待されている。

特に次世代ゲームの要求スペックが高まる中で、8GB構成では将来的なボトルネックとなる懸念があるため、AMDが8GBモデルを主力製品と位置付ける可能性は低い。生産ラインの観点からも、既に一定量の8GB基板が製造されているため、完全なキャンセルは現実的ではないとの見方が示されている。

RTX 5060 Tiとの比較から読み解く8GBモデルの市場適合性

RX 9060 XTの8GB版が限定的な市場展開にとどまる背景には、NVIDIAが発売したRTX 5060 Ti 8GBモデルに対する市場の評価が影響していると考えられる。

実際、RTX 5060 Ti 8GBは複数の独立系テストにおいて、同世代のゲームタイトルで十分なパフォーマンスを発揮できない場面が指摘され、メモリ容量の不足がネックとなったことが明らかになっている。こうした前例は、同様のスペックを持つRX 9060 XT 8GBモデルの需要見通しを見極めるうえで重要な示唆を与える。

AMDとしては、同じ轍を踏むことを避けるべく、あえて8GB版を主力から外し、マーケット全体では16GB版に注力する戦略を選択したと捉えられる。

特に競合製品との差別化が必要なこのタイミングで、性能不足が想起される8GB構成を前面に出すことは、ブランド価値や製品評価に負の影響を及ぼしかねない。結果として、8GBモデルはローコスト市場に限定され、戦略的な「補完的製品」として位置付けられる可能性が高い。

RDNA 4世代への布石となるか RX 9060 XTの役割とComputexの注目点

RX 9060 XTの登場は、AMDの次世代アーキテクチャであるRDNA 4の布石として、技術面および市場戦略の両面で重要な位置を占める。2025年5月21日に開催されるComputexでは、AMDが複数の新製品発表を予告しており、その中心がゲーム関連製品であると明言されている。RX 9060 XTの発表はその一環とされ、メモリ構成の違いによる市場分断を含めた製品戦略が明らかになると見られている。

このタイミングでの16GB構成の強調は、NVIDIAのRTX 5060シリーズとの競合を意識した選択であり、同時に次のRDNA 4世代への橋渡しとなる位置づけと考えられる。

特に、ミドルレンジ市場での影響力を維持・拡大するためには、価格と性能のバランスに優れた製品が不可欠であり、RX 9060 XTはその試金石となる。ComputexにおけるAMDの発信内容は、単なる製品紹介にとどまらず、今後のGPU市場構造に関する示唆を含むものとなるだろう。

Source:TweakTown