Nvidiaの新型GPU「RTX 5060 Ti 8GB」が、PCIe 4.0環境下で従来以上の性能低下に見舞われていることが、ドイツのComputerBaseによる詳細な検証で明らかとなった。同GPUは1440p解像度のゲームプレイにおいて、同じ5060 Tiの16GB版より最大で22%以上劣後し、極端な例では1パーセンタイルのフレームレートが24.6 FPSから3.3 FPSに急落するケースも報告された。
背景には、VRAM容量の不足が深く関係しており、8GBモデルはGPUメモリの枯渇時にシステムDRAMやPCIe帯域に依存せざるを得なくなっている。特にPCIe 4.0では帯域幅の限界が顕在化し、PCIe 5.0環境に比べて明確なボトルネックが生じている構図だ。新型GPU選定において、帯域幅とVRAM容量の両面から慎重な判断が求められる。
RTX 5060 Ti 8GBはPCIe 4.0環境下で最大22%の性能劣化を確認

Nvidiaの新型GPU「RTX 5060 Ti 8GB」において、特にPCIe 4.0接続時の性能低下が顕著であることがComputerBaseの検証で裏付けられた。1440p解像度でのゲーム性能は、同じGPUの16GBモデルと比較して平均12%劣る結果が出たが、PCIe 4.0を用いた場合、その差はさらに広がり、22%を超える場面も観測された。
また、具体例として「Dragon Age: The Veilguard」では、PCIe 5.0から4.0への変更によって1パーセンタイルのフレームレートが24.6 FPSから3.3 FPSにまで激減するなど、ユーザー体験に直結する深刻な影響が報告された。
このような結果は、PCIe帯域幅とVRAM容量の相関を示す技術的知見を裏付けるものでもある。特に8GBモデルでは、ゲーム中のVRAM使用量が上限に達した際、データの転送経路がGPUからシステムDRAMへと移行し、帯域の限られたPCIe 4.0がボトルネックとなっている構図が浮かび上がる。この帯域制限は特定のゲームタイトルにおいて、レンダリング処理全体に深刻な遅延をもたらし、数値的なFPSの低下以上にゲームの没入感を損なう可能性がある点にも留意すべきである。
VRAM容量とPCIe帯域の連動が明確化された設計上の課題
今回の検証結果は、GPU性能評価において単なるスペック比較では測れない構造的な要因の重要性を際立たせた。ComputerBaseは、RTX 5060 Ti 8GBがVRAM不足に陥った際、データ転送がシステムDRAM経由となることにより、PCIe帯域幅への依存度が飛躍的に高まる点を明らかにした。この依存構造は特にPCIe 4.0環境において顕在化し、通常時では気付きにくいボトルネックがゲーム処理時に露呈する。
PCIe 5.0環境では同GPUの制限が相対的に緩和されるものの、それは高帯域に支えられた緩衝作用に過ぎず、根本的な解決策とはなり得ない。8GBというVRAM容量は、2025年時点の最新タイトルに対してはすでに逼迫しており、特に高解像度・高設定を志向するユーザーにとってはボトルネック要因となりうる。
また、同じアーキテクチャでVRAM容量が倍増したモデルとの性能差が極端に大きいことは、今後の製品ラインアップ設計においても明確な示唆となる。設計思想としての「帯域依存を前提としたメモリ構成」がユーザーにとって合理的かどうか、再検討の余地が生じている。
旧世代インフラとの非整合が購買判断に影響を与える可能性
現在も多数のゲーミングPCはPCIe 4.0環境にとどまっており、こうした旧世代インフラを基盤とするユーザー層にとって、RTX 5060 Ti 8GBは性能面で不利な選択肢となる恐れがある。ComputerBaseのテスト結果は、PCIe 4.0が原因で極端なフレームレート低下を招くシナリオを明確に示しており、8GBモデルと16GBモデルで実使用時の性能体感差が数値以上に顕著であることを意味している。
PCIe 5.0対応マザーボードやCPUを揃えた環境であれば、こうした問題の多くは緩和されうるが、買い替えコストを伴うため現実的な選択肢ではない場合も多い。したがって、ミッドレンジGPUとして設計されたはずのRTX 5060 Ti 8GBが、実際にはより高コストなハードウェア環境を必要とするという逆説的な構造が浮き彫りになる
。今後、Nvidia製品を含むGPU市場では、帯域とメモリ容量の最適設計だけでなく、インフラとの親和性も問われることになろう。購入前に自身の環境との整合性を再確認することが、ユーザー側にも一層求められる局面となっている。
Source:OC3D