ドナルド・トランプ前米大統領が「すべての外国映画」に対して100%の関税を課す意向を示したことで、2025年5月5日のNetflix株は一時2%安を記録した。トランプ氏は海外映画制作の奨励が「国家安全保障上の脅威」となり得ると警鐘を鳴らしている。関税案が実現した場合、視聴比率の約3分の1を映画が占めるNetflixは、業界全体の供給網縮小と制作コスト増加の影響を直接受ける構造にある。

一方で、Ritholtz Wealth ManagementのCEOジョシュ・ブラウン氏は同社の広告付きプランに収益成長の余地を見出し、弱気市場でも同社株の成長持続を予想している。ただし、ウォール街の平均目標株価は現水準から約5%の下落余地を示しており、短期的には警戒感も残る。

外国映画への100%関税がNetflixに与える業績インパクト

ドナルド・トランプ前大統領は、自身のSNS「Truth Social」にて、外国で制作された映画に対し100%の関税を課す方針を公表した。これにより、2025年5月5日のNetflix(NFLX)株は一時2%下落したが、同社株価は依然として4月初旬から約40%上昇した高水準にある。トランプ氏は、他国による映画制作の囲い込みが「国家安全保障上の脅威」だと強調しており、米国映画産業の防衛を掲げる姿勢を明確にした。

この関税案が実行されれば、コンテンツの調達コストが大幅に上昇する恐れがある。特にNetflixは、同社プラットフォームにおいて映画コンテンツが視聴全体の約3分の1を占めており、海外制作に大きく依存していることから、調達網の制約や制作コストの高騰が業績の下振れ要因となるリスクがある。映画プロデューサーのクリス・フェントン氏も、これらの関税がストライキ時と同等の業界機能停止を引き起こす可能性に言及しており、業界全体に広範な影響を及ぼすと見られている。

Netflixにとって重要なのは、グローバルな制作体制と多様なコンテンツ供給力の維持であり、関税によるコスト構造の変化は収益性の改善を阻害する要因となり得る。ただし、現段階では具体的な政策実施時期や詳細な影響は明らかではなく、市場は不透明性を織り込む段階にある。

株価上昇と投資家評価の乖離が示す今後の注視点

2025年5月現在、Netflix株は短期的な調整を見せつつも、4月初旬の安値から約40%上昇しており、市場の回復局面における成長株としての注目度は依然として高い。Ritholtz Wealth ManagementのCEOであるジョシュ・ブラウン氏は、同銘柄を「2025年最有力株」と評価し、広告付きプランの収益性を主因に強気姿勢を継続している。ブラウン氏は、米経済が景気後退に向かう場合でも、加入者が手頃な価格帯のプランへ移行しつつ維持される可能性に言及し、収益基盤の安定性を評価している。

実際、Netflixの広告付きプランはプレミアムプランと比べて収益性が高いとされ、消費者が支出を抑える局面でも収益の目減りを抑制し得る構造にある。ただし、ウォール街の見方は一様ではなく、アナリストによる平均目標株価は1,088ドルと現水準より約5%下の水準に設定されている。これにより、投資家間では期待と警戒が混在する構図となっている。

株価が中長期的な成長期待を織り込んで上昇している一方で、足元の政策リスクや業界構造の変化を受けた調整圧力は無視できない。現在の水準は高評価の裏に潜む下方リスクを慎重に見極める局面であり、今後の政局や業界動向次第では評価が再調整される可能性もある。市場参加者にとっては、短期的な材料と長期的な構造的視点の双方を見極める姿勢が求められている。

Source:Barchart.com