Metaをはじめとする米テック大手がAIインフラへの設備投資を大幅に拡大するなか、Nvidiaに対する市場の期待感が再び高まっている。Amazonは2025年に1,000億ドル規模の設備投資を見込み、Metaは支出見通しを最大720億ドルに引き上げた。こうした動きは、Nvidiaの高性能GPUへの需要を支える構図を示している。

一方で、Nvidia株には強気一辺倒ではない力学が働いている。Seaport Globalのジェイ・ゴールドバーグは目標株価を100ドルに引き下げ、「売り」評価を唯一公言する存在として異彩を放っている。加えて、Barron’sの調査ではNvidiaが「最も割高な銘柄」との評価をテスラに次ぐ水準で受けており、大手機関投資家による空売りも増加傾向にある。

AI需要の追い風と高値警戒感が交錯する中、月末の決算発表は、Nvidiaの成長持続性と市場の期待が正当化されるかを見極める試金石となる可能性がある。

テック大手のAI投資継続が示すNvidia需要の堅調な下支え

2025年第1四半期の決算シーズンにおいて、Amazon、Microsoft、Alphabet、Meta Platformsといった米国の主要テクノロジー企業は、AI関連インフラへの投資を維持または拡大する姿勢を明確にした。Amazonは四半期の設備投資として243億ドルを投じ、年間で最大1,000億ドル規模の支出を示唆。特にAWS関連のインフラ整備や、AI需要を背景としたTrainiumなどのカスタムシリコン開発への資金配分が強調された。

MetaもAIを戦略の中心に据え、設備投資ガイダンスを640億〜720億ドルへと上方修正しており、GPUを活用したデータセンター支出の拡大がその理由として挙げられている。

こうした投資傾向は、NvidiaのハイエンドGPUに対する需要が引き続き高水準で推移することを示唆する。Alphabetは、AI技術がもたらす事業機会への確信を背景に、今後も四半期ごとの設備投資が第1四半期水準を上回る可能性を示している。さらに、Vertivのようなデータセンター設備関連企業も、短期・長期両面での需要拡大を見込んでおり、エコシステム全体での成長期待が共有されている。

ただし、これらの投資の一部は自社製チップへの移行を含んでおり、Nvidiaへの依存度が徐々に変化する余地も否定できない。AmazonやGoogleがカスタムシリコン開発を進めている現実は、将来的な競争環境の変容を予見させるものである。とはいえ、現時点ではNvidiaの供給能力や技術的優位性を代替できる選択肢は限られており、各社のAI戦略における中心的存在である状況に変わりはない。

空売り圧力と評価分裂が映すNvidia株への二重構造的視線

一連のポジティブなAI投資の流れとは裏腹に、Nvidia株に対しては機関投資家を中心とした空売りの動きが強まりつつある。Seaport Global Securitiesのジェイ・ゴールドバーグは、Nvidiaに対する唯一の「売り」評価を掲げ、目標株価を100ドルとした。この水準はウォール街の主流から大きく乖離しており、同氏の見解は異端である一方で、注目度も高い。さらに、米中間の貿易摩擦の激化を受けて、複数の証券会社が目標株価を引き下げた事例も確認されている。

Barron’sの調査では、プロ投資家119人中15人がNvidiaを「市場で最も割高な銘柄」と見なしており、これはテスラに次ぐ順位である。この結果は、過熱気味との認識が一部で共有されていることを示す。成長余地に対する信頼と、バリュエーション面での警戒感がせめぎ合うNvidia株には、現在の価格水準に対する評価が二極化している現状が浮かび上がる。

Nvidiaが直面するこのような市場の二面性は、短期的な調整リスクと長期的な成長期待の両方を孕んでいることを示唆する。特に、AIインフラへの旺盛な投資が一時的なブームで終わるか、持続的な技術基盤構築へと移行するかによって、Nvidiaの将来像は大きく左右される。今月末に予定される同社の四半期決算発表が、市場の分裂した視線をどのように方向づけるのかが次なる注目点である。

Source:Barchart.com