マイクロソフト(MSFT)は2025年度第3四半期において、売上高701億ドル(前年比13%増)、1株利益3.46ドル(同18%増)と、いずれも市場予想を上回る成績を記録した。クラウド収益は424億ドル(同20%増)に達し、AzureとOpenAIとの提携を軸にAI関連売上も予測を超過。商業契約残高は3,150億ドルと大幅に積み上がり、クラウドとAIインフラへの積極投資を背景に成長基盤の強さが際立った。

ウォール街では、同社のAI・クラウド主導の戦略が持続可能な成長を支えると見られており、アナリスト46人中42人が「買い」以上を継続。平均目標株価は505.3ドル、最高値は600ドルとされ、現在の株価水準から最大37.5%の上昇余地があるとの見立てが広がる。粗利益率には短期的な圧力があるものの、全体収益効率は向上しており、中長期の投資妙味は依然高い。

クラウドとAIが収益成長を牽引 AzureとOpenAI契約がQ3業績を後押し

マイクロソフトは2025年度第3四半期において、クラウドおよびAI事業が収益の主要な成長エンジンとなり、前年同期比13%増の701億ドルの売上と、18%増の1株利益3.46ドルを達成した。Azureの売上は20%増加し、インテリジェントクラウド部門は268億ドル(同21%増)に達した。

商業契約残高(RPO)は34%増の3,150億ドルに拡大し、その40%が12カ月以内に売上として認識される見込みである。AI関連の売上は、OpenAIとの大規模契約を含めて再び市場予想を上回り、クラウド上でのAIワークロードの増加が収益成長に直結している。

CEOサティア・ナデラは、「クラウドとAIはすべてのビジネスの基盤となりつつある」と述べ、Azureが多様な業界においてミッションクリティカルなワークフローを担っている現状を強調した。AIインフラ拡充による粗利益率の一時的な低下(69%→68%)は見られるものの、それに伴う需要の拡大と収益力の上昇が、結果として全社的な利益成長につながっている。クラウドとAIの融合が今後もマイクロソフトの競争優位を支えるとする市場の認識は強まっており、次期四半期においてもAzureは34〜35%の売上成長が見込まれている。

ウォール街が強気姿勢を継続 目標株価は最大600ドルに到達

マイクロソフトの好決算を受け、ウォール街のアナリストは同社株式に対して強気の評価を維持している。CMBインターナショナル証券のサイイ・ヘー氏は、AIインフラ需要がデータセンター容量を上回っている現状を踏まえ、長期的な成長の持続可能性を評価し、目標株価を503ドルから510.30ドルに引き上げた。またDBS証券のアンディ・ユー氏も、クラウドおよび生産性ソフトウェアにおける支配的地位、ならびにサイバーセキュリティ分野での専門性を長期的成長ドライバーと位置づけている。

市場では現在、アナリスト46人中38人が「強く買い」、4人が「買い」、4人が「ホールド」と評価しており、平均目標株価は505.3ドル、最高目標株価は600ドルとされる。これは現在の株価から最大37.5%の上昇余地を示唆する水準である。

足元では株価が52週高値から7%下落しているが、収益成長とキャッシュフロー創出力に支えられた投資妙味は依然として高く、配当と自社株買いを通じた株主還元(第3四半期は97億ドル)も継続されている。短期的な粗利益率圧力がある中でも、全体の営業利益率が上昇している点に着目する評価が目立つ。

AI投資と財務健全性の両立 フリーキャッシュフローと資本的支出のバランスに注目

マイクロソフトはクラウドとAIインフラへの継続的な投資を進める一方で、高水準のフリーキャッシュフローを維持している。2025年度第3四半期の資本的支出は214億ドルに上ったが、それでもフリーキャッシュフローは203億ドルと潤沢であり、営業キャッシュ創出力の高さが際立っている。これは、AI基盤の拡張という戦略的支出を実行しながらも、財務の健全性と株主還元の両立を可能にしていることを意味する。

同社は粗利益率が短期的に低下する見通し(クラウド部門では約67%)を示しながらも、AI関連需要が供給能力を上回る状況において、機敏な経営判断と投資の規律を重視している。2026年度には収益13.4%増、利益12.4%増という成長予測が示されており、将来予想利益の28倍という株価水準も過去5年平均(31.2倍)を下回る割安感がある。短期的な市場の揺らぎを超えて、キャッシュ創出力と投資実行力のバランスが中長期の評価に結びついている。

Source:Barchart