NvidiaとMediaTekが共同開発したArmアーキテクチャ採用のPC向け新型プロセッサ「N1」および「N1X」が、2025年5月に台北で開催されるComputexで初公開される見通しとなった。両社CEOが連続講演を行う中での発表が予想され、Blackwell GPUとMediaTek製CPUを組み合わせたAIワークステーション向け「GB10プラットフォーム」構想も同時に浮上している。

高性能Cortex-X925およびA725コア搭載が想定されるこれらのチップは、Snapdragon XやRyzen APUでは届かない分野への進出を視野に入れており、Nvidiaのゲーム適性に強い独自GPUとの統合によって高性能志向の市場にも訴求する構えである。一方で、商用化には技術的課題が残り、2026年まで市場投入が遅延する可能性も指摘されている。

MediaTekが大規模なFCBGAパッケージング能力を確保している点からも、PC用途での量産展開を前提とした動きと見られるが、正式な製品投入時期は依然不透明なままである。

ArmアーキテクチャによるWindows PC市場への本格参入

NvidiaとMediaTekが開発中の「N1」および「N1X」プロセッサは、最大でCortex-X925とCortex-A725を各10基搭載する可能性が報じられている。この構成は、性能重視と電力効率の両立を狙うものであり、従来のx86系チップとは異なるアプローチを採っている。

Windows向けArmプロセッサという観点では、QualcommのSnapdragon Xが先行しているが、Nvidiaは独自GPU「Blackwell」との統合により、より高度なグラフィック処理とAI処理の融合を目指している。

さらに、MediaTekのパッケージングキャパシティの大規模確保は、これらのチップがスマートフォン向けではなく、明確にPC市場への投入を想定していることを示唆している。

2024年末の段階で既にFCBGAパッケージの対応を進めていたという事実は、準備の早期段階から量産を念頭に置いた開発体制が整備されていた可能性を物語る。一方で、製品の完成度やドライバの整備状況に課題が残っており、市場投入は早くても2026年以降になる可能性があるとの報道も複数存在する。

NvidiaはこれまでArmプロセッサ市場に限定的な参入しか果たしていなかったが、MediaTekとの提携により、スマートフォン以外の分野でもArmを基盤とした競争が加速する構図が形成されつつある。

Blackwell GPUとGB10プラットフォームがもたらす市場構造の変化

Nvidiaの次世代GPU「Blackwell」をMediaTek製CPUと組み合わせる「GB10プラットフォーム」は、AIワークステーションやコンパクトな高性能PC市場を明確に標的としている。

これにより、従来のノートPCやエントリーレベルのデスクトップとは一線を画す新たな製品カテゴリが形成される可能性がある。AMDのRyzen APUやQualcommのSnapdragonでは対応が困難な高負荷演算処理やAI推論用途において、Blackwellの演算性能が鍵を握る。

従来、GPU性能を重視するユーザーは専用グラフィックスカードを必要としていたが、GB10プラットフォームはこれをSoCレベルで内包し、発熱・電力・設置スペースといった制約を低減する構成となる可能性が高い。

これにより、小型筐体でも高性能なAI処理や高度なゲーム体験が実現される道が開かれることになる。MediaTekの通信技術と電力管理技術を統合することで、低消費電力かつ高性能な製品群の登場が期待される。

ただし、AI分野での実装においてはソフトウェア最適化やOSレベルの対応が不可欠であり、NvidiaがWindows-on-Arm環境においても既存のCUDAエコシステムやTensorRTの互換性をどこまで維持できるかが注視されるべき点である。競合製品との差別化が価格性能比の水準に左右される以上、GB10が示す戦略的意義は市場投入後の評価に委ねられることとなる。

Source: Tom’s Hardware