マイクロソフトはWindows 11の最新バージョン「24H2」がHomeおよびPro版において広範に展開されたと発表したが、同時にAzure Virtual Desktop(AVD)環境でアプリが起動に失敗する深刻な不具合が確認された。
問題はアプリを仮想環境に動的に接続する「App attach」機能に起因し、「要素が見つかりません」というエラーが発生する可能性があるとされる。CimFS形式のアプリイメージ使用時に特有の現象であり、VHDX形式への切替が暫定的な回避策とされる。
この障害は旧バージョンでは発生しておらず、修正は2025年6月に予定されている。クラウドPC戦略とAVDの普及に注力するマイクロソフトにとって、リリース時期と内容の不整合が今後の信頼性評価に影響を及ぼす可能性がある。
AVDの「App attach」機能におけるCimFSイメージの使用制限と既知のエラー

Windows 11 24H2において、Azure Virtual Desktop(AVD)の「App attach」機能が正常に動作しない問題が明らかとなった。特に、マイクロソフトが高速性と効率性を謳うCimFS(Composite Image File System)形式のイメージを使用した場合に、「要素が見つかりません(Element not found)」というエラーメッセージが表示される事例が報告されている。
これはアプリケーションの起動プロセスそのものが失敗することを意味し、仮想デスクトップ環境で業務アプリケーションを利用するユーザーに直接的な影響を及ぼす。
本事象は、Windows Health Dashboardにおいて既知の問題として2025年5月初旬に追加されており、従来のVHDやVHDX形式では同様の障害は発生していない。
マイクロソフトは暫定的対応として、CimFSではなくVHDXイメージへの切替を推奨しており、根本的な修正は6月に提供される予定である。展開直後の新OSバージョンにおいて、AVDの中核機能が一部環境で使用不能になることは、クラウド業務基盤の安定運用に対する重大な懸念材料となる。
マイクロソフトの展開戦略とWindows 365との関係性にみる整合性の課題
マイクロソフトは、Windows 11 24H2の段階的ロールアウトが最終フェーズに到達したことを発表し、HomeおよびProエディションの一般ユーザーに対して自動更新を開始している。更新はユーザー主導で延期可能とされているが、管理されていないデバイスでは実質的に自動配信となる。
一方で、同社が推進するWindows 365 Cloud PCの基盤とAVDは技術的に密接に関連しており、今回の不具合はその基幹機能に直接影響を及ぼす点で看過できない。
CimFSの採用は、運用効率化を目的とした技術的進展の一環であるものの、安定性が十分に検証されていなかった可能性も排除できない。
問題発生が旧バージョンでは確認されていないことから、24H2に特有の実装や構成変更が障害の引き金となっていると考えられる。マイクロソフトが機能改善と称して導入した仕様変更が、結果として運用現場に混乱を招いている状況は、クラウド主導型戦略と現実の運用ニーズとの乖離を浮き彫りにしている。
Source: The Register