2025年5月5日、ウォーレン・バフェットが年内でバークシャー・ハサウェイのCEOを退任する意向を発表したにもかかわらず、翌日の株式市場では個人投資家によるB株への純資金流入が2,435万ドルに達し、過去10年で4番目に大きい規模となった。

この動きは同株が当日5%超下落し、過去5年で3番目に悪いセッションとなった最中に発生しており、投資家心理の底堅さと後継者グレッグ・エイベルへの一定の信任を示す現象とみられる。バフェットは今後も会長職を継続し、一株も売却しない意向を表明。その一方で市場では、エイベルが「銘柄選定の才能に欠ける」との懸念が残る中、個人投資家が同社を安全資産と見なす動きが強まった可能性もある。

バフェット退任発表後に過去最大級の資金流入 個人投資家の動きが示す市場心理

ウォーレン・バフェットの退任表明を受け、2025年5月5日のバークシャー・ハサウェイB株は5%超の急落を記録し、過去5年間で3番目に悪いパフォーマンスとなった。にもかかわらず、同日には個人投資家による約2,435万ドルの純資金流入が確認され、2016年以来最大のネットインフローとして記録された。Vanda Researchのデータによれば、これは前営業日の3倍を超える水準であり、2014年以降では4番目の規模となる。

この現象は、通常であれば市場の不安が高まり資金流出が加速する局面で、逆に個人投資家が積極的に買い向かったという点で特筆に値する。特に、バークシャーが3,300億ドルを超える現金を保有し、景気後退時にも対応可能な体力を備えている点が、こうした投資行動を後押ししたと考えられる。

また、5月3日に開催された年次総会において、バフェットが「エイベル体制の下で業績は自分の時より良くなる」と語り、自身も引き続き会長職を務める方針を示したことが、市場の不安を和らげる一因となった。株式を一切売却しないとしたバフェットの宣言も、投資家にとっては安心材料となった可能性が高い。

後継者グレッグ・エイベルに寄せられる期待と不安の交錯

新たにCEOとなる予定のグレッグ・エイベルは、これまでバークシャーの非保険部門を統括してきたが、投資家の間では彼の「銘柄選定能力」に対する評価が定まっていない。バフェットが60年にわたり築き上げた「価値投資」の哲学と実績に対し、エイベルが同様の信頼を勝ち得るには時間がかかると見る声もある。

事実、今回の株価急落は、経営トップ交代に対する市場の懸念を反映した動きといえる。しかしながら、バフェットは会合の場で「グレッグが次期CEOに最も適任」と明言し、全幅の信頼を寄せる姿勢を明確にした。この発言に加え、彼が引き続き取締役会の議長を務めることも、継続性への安心材料となっている。

一方で、市場関係者の中には、経営戦略の変化やM&A方針の見直しがなされる可能性を注視する向きもある。特にエイベルがどのようにして資本を活用し、バフェット時代の「割安な買い」を継承できるのか、その手腕が問われる局面にある。今回の交代は、バークシャーが今後も「守りと攻め」を両立できるのかを占う試金石といえよう。

個人投資家による積極買い その背景にある信念と地合い

今回の大規模な資金流入は、単なる偶発的な反応ではなく、個人投資家の中に根付いた「バフェット信仰」および「バークシャー信頼」に支えられている可能性がある。年次総会では彼の顔が印刷されたTシャツやぬいぐるみを求める長蛇の列ができたように、個人投資家の多くは彼を象徴的存在として見ている。

さらに、2025年に入りバークシャー株は13%以上の上昇を遂げており、同年に4%超下落しているS&P500に対しても優位性を示している。こうした背景が、個人投資家にとっての「逃避先」として同社株を選ばせた要因ともいえる。特に景気減速への警戒感が高まる中で、現金資産の豊富さはより重要な指標と映る。

加えて、市場では「バフェットが引退直前に再び大型投資を仕掛けるのではないか」との思惑も浮上している。彼が歴史的に「恐怖の中で買う」戦略を取ってきたことを想起すれば、この局面が最後のビッグディールの舞台となる可能性も完全には否定できない。個人投資家の動きは、そうした希望的観測も織り込まれているように見える。

Source:CNBC