イーロン・マスクは、米政府の「行政効率局(DOGE)」の主要任務を終え、同局から退任する意向を示した。同時に、テスラCEOとしての職務が「非常に困難だった」と認め、今後はワシントンから距離を置き、テスラへの関与を強める姿勢を明かした。テスラ株は過去最大規模の下落に直面しており、時価総額の半分以上、約8000億ドルが失われたと報じられる。
これにより、マスクの個人ブランドが企業業績に悪影響を与えているとの見方も強まっている。一方、後任CEO探しの報道についてテスラ取締役会は完全否定し、同氏への信任を強調した。DOGEの将来には不透明感が漂い、トランプ政権内部の対立も指摘される中、マスクの退任は政治と経済の両領域に波紋を広げつつある。
DOGE構想の終焉とマスクの苦悩を物語る退任発言

イーロン・マスクは、自身が主導していた米国政府の省庁改革機関「行政効率局(Department of Government Efficiency:DOGE)」からの離任を明らかにした。彼はフォックス・ビジネスのインタビューで、DOGE創設以降の企業運営が「極めて困難だった」と語っている。マスクはDOGEを「生き方」になぞらえ、仏教におけるブッダの不在を引き合いに出しながらも、自身が去ることでDOGEの意義が揺らぐわけではないと主張した。ただし、トランプ政権内部の緊張感や構想に対する評価の低迷を背景に、DOGEの存続には不確実性がつきまとう。
この発言は、マスクの政府関与がテスラやスペースXといった民間事業に与えていた負荷の大きさを物語る。同時に、政界での実績や評価を求めた動機が、結果として企業経営に支障をきたした側面も否定できない。こうした言動からは、政治的影響力と経済的リーダーシップを並行して担うことの困難さと限界が浮かび上がる。DOGEが短命に終われば、マスクの「政府改革への挑戦」は挫折という形で歴史に刻まれる可能性もある。
時価総額8000億ドル消失 テスラ苦境の主因は誰か
テスラはここ数カ月で株式市場において過去最大規模の価値喪失を記録した。報道によれば、企業価値のおよそ半分、金額にして約8000億ドルが市場から消えたという。これはマスクのパーソナルブランドの毀損が、製品価値や株主信頼にまで影響を及ぼした結果とされている。また、マスクがDOGEなど政治分野に傾倒するなかで、経営資源の分散や判断力の鈍化が業績悪化を招いたとの批判も根強い。
5月1日付のウォール・ストリート・ジャーナルによると、テスラはすでに後任CEOの選定を外部の人材紹介会社と協議していたと報じられたが、これをテスラ取締役会のロビン・デンホルム氏が否定し、マスクへの信任継続を明言した。だが、否定声明にもかかわらず、株主や投資家の間では疑念が広がり、ブランドの回復には時間を要する見通しである。テスラの業績悪化は、単なる市場環境の問題ではなく、指導者自身が企業の信頼資産を棄損したという構造的な課題を孕んでいる。
Source:msn