テレヘルス企業Hims & Hers Health(HIMS)は、四半期見通しが市場予想を下回ったにもかかわらず、株価が一時9%下落後に18.1%急騰し、49.47ドルで取引を終えた。第1四半期は調整後利益が前年の4倍に拡大し、売上は前年比111%増の5億8600万ドルと予想を上回った。
特に月間サブスクリプション数が約240万人に達し、月額84ドルという価格も前年同期比で53%上昇している。ノボノルディスクとの提携により、肥満治療薬Wegovyを会員向けに月599ドルで提供開始したことも、株価上昇の材料となったと考えられる。
四半期決算は売上好調も利益未達 Himsの実力と課題

Hims & Hers Healthの2025年第1四半期決算は、売上が前年比111%増の5億8600万ドルと市場予想を大きく上回った。一方で調整後利益は1株あたり20セントにとどまり、FactSetによる予想の24セントを下回った。売上成長の背景には、月間サブスクリプション契約者数の38%増加と、平均課金額の53%上昇がある。これにより総収益は急増したが、利益率の面では一部に課題を残した形だ。
投資家はこのような収益構造を慎重に評価しており、当初の株価急落(マイナス9%)もその懸念の反映といえる。だがその後、売上成長とサブスクリプション強化への評価が勝り、株価は18%超の急反発を見せた。この反応は、短期的な利益未達よりも、中長期的な収益モデルの拡張性が重視されたことを示唆する。成長企業にとって利益よりも継続的なユーザー獲得とARPU(利用者単価)の上昇が評価基準となっている現状がうかがえる。
Wegovyの導入とノボノルディスクとの提携が生む市場の期待
Himsは4月29日、ノボノルディスクと提携し、肥満治療薬Wegovyの提供を会員制で開始すると発表した。価格は月額599ドルで、既存のHimsプラットフォームと統合される形で展開される。これにより、単なる遠隔医療企業から「処方薬付きサブスクリプション」という新しい市場ポジションへと踏み込む構図となった。
発表翌日にはHims株が23%急騰するなど、市場の反応は即座かつ好意的であった。Wegovyは近年、米国を中心に急成長している肥満治療薬市場の象徴的存在であり、Himsが同市場に参入した意味は大きい。だが、提携の持続性や収益への定着効果は現時点で不透明であり、長期的には薬価規制や保険適用の動向も影響を及ぼす可能性がある。とはいえ、Himsが製薬大手との協業を通じてプラットフォームの高付加価値化を図る戦略は、今後の遠隔医療産業の一つの方向性を示すものといえる。
2030年に6.5億ドルEBITDA見通し 急成長企業の長期戦略
Himsは2030年までに売上高65億ドル、調整後EBITDAで13億ドルという中長期の業績目標を掲げている。これに対して2025年通期の予想売上は23億〜24億ドルであり、5年以内に約3倍の成長を実現する計画だ。現在のサブスクリプション事業の伸長に加え、今後は診断サービスや予防医療との統合も視野に入れているとみられる。
CEOアンドリュー・デュダム氏は声明で「製薬企業や予防診断企業との連携によってエコシステムを拡大し、数千万人規模のユーザーに最適な医療体験を提供する」と述べており、単なる成長ではなく業界全体のハブを目指す姿勢が明確である。ただし、事業拡張に伴うコスト増や薬剤依存度の上昇など、リスク要因も看過できない。将来的な規制や競争環境次第では、計画通りの利益率が維持できない可能性もある。中長期視点では、革新性と実行力の両輪が試される局面に入っている。
Source:investors business daily