JPモルガンのリスク政策委員会議長リンダ・バマン氏が、5月6日に同社株式9,500株を1株250ドルで売却し、総額237万5,000ドルを得た。同氏は前日にも500株の非金銭的処分を行っており、連日のインサイダー取引として注目を集める。

さらに注目されるのは、CEOジェイミー・ダイモン氏による約3,150万ドル規模の株式売却である。ダイモン氏は予め設定されたルール10b5-1に基づき8月までに100万株の売却を計画しているが、景気後退への警戒を示す中での動きとされる。

好決算を受けてJPM株は1か月で16%超上昇しており、売却のタイミングは極めて戦略的とも映る。ただし、関税政策への不安が背景にある可能性は否定できない。

経営陣による連続的な株式売却が示す異例のタイミング

JPモルガンの取締役リンダ・バマン氏とCEOジェイミー・ダイモン氏が、相次いで同社株式を多額に売却した事実は、投資家心理に大きな波紋を広げている。バマン氏は5月6日に9,500株を1株250ドルで売却し、2,375,000ドルを確定。さらにその前日には500株を金銭の授受を伴わずに移動させた。

一方のダイモン氏は4月14日、133,639株を1株231.34ドルで売却し、約3,150万ドルを得ている。これはあらかじめ設定されたルール10b5-1取引計画に基づくもので、8月1日までに100万株の売却を完了させる計画である。

両者の売却は法的手続きに則ったものであるものの、好決算と株価上昇の直後という市場環境下での動きであることが異彩を放っている。JPモルガンの第1四半期決算は純利益146億ドル、1株利益5.07ドル、収益460億ドルと市場予想を上回った。株価も過去1か月で16%を超える上昇を見せており、通常であれば保有継続が選択される局面である。

この売却タイミングは、内部者による慎重な市場観測の結果とも捉えられる。トランプ政権下での貿易関税に対する懸念、あるいは今後のマクロ環境変化に対する警戒感が影を落としている可能性は拭えない。結果的に、株価上昇の裏で経営陣が静かに利益確定を進めている現状は、市場に対して一種の冷静な警告として受け止められるべきだろう。

好決算と株価上昇の陰に潜むマクロリスクへの警戒

JPモルガンの第1四半期決算は、資産運用と投資銀行業務の堅調な手数料収入を背景に、前年比8%増の収益を記録し、利益も146億ドルに達した。これを受けて、株価は過去1か月で16%以上の上昇を見せ、5月現在で249ドルに達している。表面的には順調な業績推移と株主還元の期待が交錯し、強気な市場評価が続く状況にある。

しかしこの裏で、CEOのダイモン氏は米国経済に対する不安感を露わにしている。同氏は過去の発言において、トランプ前政権による貿易関税の影響を米国経済の大きなリスクとみなし、リセッションの引き金になり得ると警鐘を鳴らしてきた。こうした発言と、今回の大量株式売却が時期的に重なることから、市場の楽観とは裏腹に、経営層が慎重姿勢を強めている構図が浮き彫りとなる。

業績上の堅調さは確かであり、短期的には株価上昇の原動力となる要素が揃っている。ただし、それと同時に、インフレ継続や地政学的リスク、金融政策の方向性など、経営者としてのリスク認識は株主とは異なる尺度で働いている可能性がある。市場が上昇一辺倒に傾く中での売却は、過熱に対する冷静な一手として捉えるべき局面である。

Source:Finbold