AI需要の拡大が続く中、Amazonが2030年までにNvidiaの時価総額を上回るとの見方が浮上している。NvidiaがAIチップ供給の中心を担う一方、AmazonはAWSを通じてAI活用の実利を収益に結びつけている。特に、Anthropicへの80億ドルの投資を通じてAI戦略を強化し、AWSの営業利益率は39%に達した。

これに対し、主要IT企業が独自AIチップの開発を進める動きは、Nvidiaの成長に不確実性をもたらしている。両社の市場評価には依然として大きな差があるが、クラウド領域でのAI導入加速がAmazonの評価を押し上げる可能性がある。

AI強化に向けた投資拡大とAWS収益性の飛躍

AmazonはAI関連事業への積極投資を通じて、AWSの成長を加速させている。2023年第1四半期、AWSの収益は117億ドルに達し、営業利益率は39%を記録した。この高い収益性は、AmazonがAI技術を事業基盤に統合することに成功している証左である。特に、Anthropicに対する80億ドル規模の出資は、生成系AI分野への本格的な参入を象徴する動きであり、単なる資本提供にとどまらず、AIモデルをAWSに最適化する戦略的な布石と見られている。

AWSはすでにクラウド業界で主導的地位を築いており、AIの統合によってさらなる差別化が進む可能性がある。一方、NvidiaはAI開発の要となる半導体設計に注力しているが、クラウドベンダーが自社製チップを内製化し始めていることで、Nvidiaへの依存度が相対的に低下する局面が生まれている。これが今後の成長性に与える影響を無視することはできない。

AmazonのAI投資とクラウド事業の連動は、同社の中長期的な競争優位を確立する動きとして注視される。単なるテクノロジー導入にとどまらず、商業的成果に直結している点が、株式市場における評価上昇の基盤となり得るだろう。

独自AIチップ開発の潮流とNvidiaへの影響

NvidiaはAI向けGPUで市場を席巻してきたが、近年のトレンドは大手テック企業によるAIチップの内製化に向かっている。Amazonに加え、Microsoft、Meta、Alphabetといったクラウドプラットフォームの覇者たちは、それぞれが自社のニーズに最適化されたチップの開発を進めており、汎用GPUに対する依存度を下げようとする動きが加速している。

この変化が意味するのは、Nvidiaの主力事業であるAIアクセラレータの需要に構造的変化が生じる可能性である。現時点でNvidiaの時価総額は2.7兆ドルと依然として巨額だが、競合による垂直統合が進行すれば、市場での交渉力や販売数量に影響を及ぼす余地がある。とりわけ、クラウド事業者によるチップ供給網の多様化は、Nvidiaにとって価格競争力の維持という新たな課題を突き付ける。

ただし、Nvidiaが引き続き独自のAIチップを進化させ、ソフトウェアとの統合に優位性を保てば、依然として高付加価値分野での地位を維持する余地はある。とはいえ、チップ市場の動的変化とクラウド業界の自立化傾向が重なる今、Nvidiaの次なる戦略的転換が中長期の評価を左右することは間違いない。

Source:Watcher Guru