エクソンモービルの株価は2025年4月に11.2%下落し、年初の上昇分を帳消しにした。背景には、OPECプラスの増産発表やトランプ前大統領の関税政策による原油価格の急落があり、ブレント原油とWTIは15%以上下落した。複数のアナリストが目標株価を引き下げたことで、下げに拍車がかかった。

一方で、同社は第1四半期決算で市場予想を上回り、88億ドルのフリーキャッシュフローと91億ドルの株主還元を実施するなど、財務の堅牢性を維持している。高配当と長期的な利益成長計画を踏まえれば、短期的な逆風を乗り越える余地があると見られる。

原油価格の急落とOPECプラスの増産方針が株価下落を招いた構図

2025年4月におけるエクソンモービル株の11.2%下落は、複合的な外部要因によって引き起こされた。まず、トランプ前大統領が提起した広範な関税構想と、それに伴う貿易摩擦の再燃が市場心理を冷やし、原油価格が大幅に下落した。ブレント原油とWTI価格はともに15%以上下落し、過去4年間で最低水準に沈んだ。これに拍車をかけたのが、OPECプラスによる増産方針である。同連合は2025年6月に日量41万1,000バレルの増産を行うと発表し、供給超過懸念が一層強まった。

原油価格と収益性が強く連動する上流部門を持つエクソンモービルにとって、この原油市場の変動は即座に業績に影響を与える構造となっている。そのため、市場ではエネルギー株全般への警戒が強まり、エクソンモービル株の下落に直結した。

加えて、複数のアナリストが目標株価を引き下げたことがさらなる売り圧力となった。たとえば、スコシアバンクのポール・チェン氏は4月初旬に目標株価を140ドルから115ドルへ、UBSのジョシュ・シルバースタイン氏も2度にわたり引き下げ、最終的には131ドルとした。こうした評価の連鎖が投資家の売却判断を加速させたとみられる。

減益決算下でも光るキャッシュフローと株主還元姿勢

エクソンモービルは2025年5月2日に発表した第一四半期決算において、1株当たり利益1.76ドルと、市場予想の1.74ドルを上回る実績を示した。前年同期比では15%近い減益であり、その背景には原油価格の下落に加え、精製マージンの低下といった複数の圧力がある。だが、このような環境下でも同社は生産量を大きく伸ばしている。特にパイオニア・ナチュラル・リソーシズの買収効果が顕著に表れ、上流部門の生産量は前年同期比で20%増加した。

加えて、財務基盤の安定性も特筆すべき要素である。第一四半期の営業キャッシュフローは130億ドル、フリーキャッシュフローは88億ドルと、それぞれ前期比で6%、10%の増加を記録している。こうした強固なキャッシュ創出力に基づき、同社は株主への利益還元を継続しており、期中における配当金43億ドル、自社株買い48億ドルを合わせて、総額91億ドルを株主に還元した。

高配当株としての側面も堅持しており、配当利回りは3.8%と依然魅力的な水準にある。景気減速やエネルギー市場の変動が続く中でも、同社の資本効率と株主志向の姿勢は変わらず、市場からの評価修復につながる可能性を残している。

Source:The Motley Fool