市場調査会社Counterpointの最新レポートによれば、Apple Watchの2024年出荷台数は前年から約20%減少した。アップグレード不足と北米市場での需要低下が主因とされ、HuaweiやXiaomiなどの競合が成長する中、Appleは苦戦を強いられている。
さらに、ベトナムからの輸入品にかかる米国の関税問題が消費者価格に影響を及ぼす可能性が指摘され、2025年には状況が一層厳しくなる懸念がある。一方、インド市場と子供向けスマートウォッチ市場のみが世界的に成長を示しており、AppleはWatch SEおよびWatch Ultraの新モデルや大幅なデザイン刷新を検討することで巻き返しを図る可能性がある。
Apple Watchの出荷台数20%減少の背景と北米市場の需要低迷

市場調査会社Counterpointの最新分析によると、Apple Watchの2024年の出荷台数は前年比で約20%減少した。2023年にも10%の落ち込みが記録されており、2年連続の減少はAppleにとって深刻な打撃となる。要因のひとつは、最新モデルにおける目立ったアップグレードの欠如だ。
消費者は高額な新モデルよりも既存モデルや他社製品に関心を向ける傾向が強まっている。特に北米市場では、Apple Watch Series 10(米国販売価格399ドル)に対する消費者の関心が低下し、価格に対する敏感さが一層高まっていることが指摘されている。
さらに、Appleは競合他社の勢いに押されている。HuaweiやXiaomiといったブランドは、同期間に成長を遂げ、Appleとの差を縮めてきた。Counterpointのレポートは、Apple Watchの北米市場での苦戦が今後の世界市場全体の戦略を左右する可能性があると示唆している。
ただし、インド市場においては出荷台数が増加した唯一の地域であり、成長余地が残されている点は注目される。この状況下でAppleは、北米市場の需要を喚起し、世界市場での存在感を再確立する戦略を模索することが求められている。
ベトナム関税の影響とApple Watchの価格上昇リスク
調査ディレクターのJeff Fieldhackによると、Apple Watchの大半はベトナムから米国へ輸入されている。このため、米国がベトナム製品に課す関税は、Apple Watchの価格に直接影響を及ぼす可能性が高いとされる。
特に、免税措置や新たな貿易協定が成立しない限り、増税分のコストはApple自身やサプライチェーン上の企業ではなく、最終的に米国の消費者が負担することになると見込まれている。2025年には、これらの関税問題がApple Watchの製造・販売計画をさらに複雑にする恐れがある。
加えて、関税は単なる価格要因にとどまらない。米国市場ではすでにApple Watchへの関心が後退しているため、関税による価格上昇はさらなる需要減退を引き起こすリスクがあると考えられる。このような中で、Appleは製造拠点の分散化や関税影響の緩和策を講じる必要があるだろう。
価格上昇が避けられない場合、消費者の購買意欲は低下し、競合他社に顧客を奪われる懸念が残る。Appleはこの難局を乗り越えるための具体策を慎重に見極める段階に立たされている。
子供向けスマートウォッチとインド市場の成長が示す未来の可能性
スマートウォッチ市場全体が停滞する中、例外的な成長を遂げているのが子供向けスマートウォッチ分野とインド市場である。Counterpointの分析によれば、インドはApple Watch出荷台数が増加した唯一の地域であり、子供向け製品は2024年において唯一世界的な成長を見せた分野である。
この事実は、従来の成人市場だけに依存するビジネスモデルからの脱却をAppleに促す重要なシグナルとなる。もっとも、これらの市場はAppleの既存の強みと異なる側面を求める可能性がある。インド市場では価格競争力が鍵を握り、子供向け製品では保護者目線の安全機能や教育要素が評価対象となる。
このため、AppleはWatch SEやWatch Ultraの新モデル投入だけでなく、価格を抑えたエントリーモデルや新しい用途特化型デバイスの開発を検討する必要が出てくるだろう。市場の成長セグメントを見極め、競合との差別化を図れるかどうかが今後の命運を分ける要素となるはずだ。
Source:CNET