AMDの最新フラッグシップCPU「Ryzen 9 9950X」が、ASRock製X870 Steel Legendマザーボード使用時に動作不能となる事例が複数報告されている。著名YouTuberのTech Yes Cityによる検証では、CPUピンにグレーの焼損跡が確認され、過電圧やソケット異常が示唆されている。

すでにASRock製AM5マザーボードに関連するRyzen 9000シリーズの故障件数は200件近くに達しており、特にX3Dモデルだけでなく非X3Dモデルにも影響が及んでいる。ASRock側はソケット内部の異物の可能性を示しているが、BIOSアップデート後の異常電力供給を指摘する声も強く、単なるユーザーエラーとは考え難い。

Ryzen 7 9800X3Dや9950Xを含む複数モデルでの損傷例が重なり、ASRock製マザーボード固有のハードウェア的問題またはファームウェア制御不備が潜在的な原因として浮上している。今後の検証結果次第で市場への波及が避けられない情勢である。

ASRock製マザーボードでのRyzen 9000シリーズ大量故障報告とその共通点

Tech Yes Cityによる報告をはじめ、ASRock製X870 Steel Legendを中心としたマザーボードで、Ryzen 9 9950Xが動作不能に陥る事例が複数確認されている。特筆すべきは、故障CPUのピンに見られるグレーの変色であり、これは焼損を示唆する兆候として注目されている。確認された損傷はCPU中央部のピンに集中しており、過電圧または不適切な電力供給経路の存在が指摘される。

報告件数においても特異な傾向が顕著である。Ryzen 7 9800X3Dの157件、Ryzen 9950X3Dの8件、非X3Dモデルでも16件の死亡例が確認されており、いずれもASRock製マザーボードに集中している。全体の傾向として、BIOSアップデート後に高電力状態が生じたケースが多数含まれており、ハードウェア単体ではなくファームウェアの影響も無視できない。

また、一部ユーザーはソケット内部の異物混入や接触不良の可能性を報告しているが、それがここまで大規模な損傷要因となる前例は過去にほとんど見られない。現段階では、ASRock製AM5マザーボードに何らかの構造的・設計的課題が潜在している可能性が強く示唆されている。

ハードウェア設計とBIOS制御の不整合が引き起こすリスク構造

Ryzen 9000シリーズで報告されている故障事例の多くは、物理的損傷に加えて電力制御の異常が絡んでいる点が注目に値する。たとえば、あるユーザーが報告した構成では、Ryzen 7 9800X3Dに対して170Wという異常な電力が供給されていた。これは本来の設計仕様を逸脱しており、マザーボードのVRM設計、BIOSによる電力制御、あるいは安全回路の不全が複合的に作用している可能性がある。

ASRockが指摘する「ソケット異物」は確かに一因となり得るが、それだけでは全体の傾向を説明しきれない。特定モデルに偏った大量の死亡報告は、設計段階における安全マージンの不足、あるいは制御系統の一部で過渡的な電圧上昇を適切に吸収できていない構造的な弱点を示している可能性がある。これが一時的なBIOSの問題であれば修正可能だが、物理設計に起因するものであれば回収や修正は困難を伴う。

市場投入された初期段階でこれほどの被害が集中的に報告される事例はまれであり、今後の製品設計全体に対する信頼性評価や、ベンダーごとの対応力がユーザー選定において一層重要な要素となるであろう。

Source:Wccftech