NvidiaがMediaTekと共同で、GeForceゲーミングGPUを内蔵したArmベースの新型PC向けCPUを開発しているとの報道が浮上した。ドイツの「Computerbase」によれば、同CPUは5月19日および20日に開催されるComputexの基調講演で詳細が明かされる可能性がある。
x86支配が続くPC市場において、Armアーキテクチャを採用した本チップは、消費電力効率と携帯性を重視するゲーミングデバイスや小型AI対応端末向けに戦略的な展開が想定されている。既に発表済みのGrace CPUとBlackwell GPUを統合したGB10チップとは異なり、より軽量かつ低価格な構成が検討されているとされる。
Windows on Armの互換性課題が残る一方、Nvidiaはゲーム開発者との豊富なネットワークを背景に、Arm対応タイトルの普及促進と同社技術への最適化を進める可能性がある。
GeForce統合Arm CPUの概要とComputexでの発表動向

NvidiaとMediaTekが共同開発中とされる新型Arm CPUは、同社のGeForceゲーミングGPUを統合する構成が想定されている。ドイツの技術系メディア「Computerbase」によれば、この新CPUは5月19日のNvidia基調講演、または20日のMediaTekによる基調講演において初めて公式に披露される可能性が指摘されている。
既に両社は1月のCESにおいて「GB10」と呼ばれるSoCを発表しており、今回の動きはその延長線上にあると見られる。
GB10は128GBメモリを搭載し、Grace CPUとBlackwell GPUを融合させた高性能SoCであるが、今回取り沙汰されている新CPUは8または12コア構成に加え、GPUも簡素化されると予想されており、メモリも16GBまたは32GBに抑えられる見通しである。
これは、従来のGB10に比べより軽量な用途を想定した構成と受け取れる。価格帯についても「大幅に安くなる」との報道があり、ミドルレンジ帯の新市場開拓が意図されていると考えられる。
対象市場の詳細は未だ明らかにされていないものの、AI処理能力と携帯性を重視した設計であることを踏まえると、携帯型ゲーミングデバイスや小型デスクトップPC領域への展開が意識されている可能性は否定できない。
x86市場への挑戦とArmアーキテクチャの課題
長らくIntelおよびAMDが二強を形成してきたx86アーキテクチャ市場に対し、NvidiaがArmベースのCPUで参入を図る動きは、既存の業界構造に波紋を広げる可能性がある。
特に、PC用ゲームソフトウェアの大半がx86向けに最適化されている現状では、Armチップの導入には依然として高い互換性の壁が存在する。Windows on Armの普及は進んでいるものの、AAA級ゲームの動作保証は限定的であり、安定したプレイ体験を提供できる環境構築には時間を要すると見られている。
一方で、QualcommのArm SoCが既に一部PCゲームの実行実績を積んでいることから、Arm CPUでも一定のゲーミング性能が期待できる兆候は表れている。また、Nvidiaは長年にわたりゲーム開発者との連携を築いており、同社独自のソフトウェアスタックやGPU最適化技術を通じて、Armプラットフォームへのゲームポートを促進する展開が予想される。
とはいえ、x86アーキテクチャに最適化されたソフトウェア資産の膨大さを鑑みれば、短期的にx86の支配構造が崩れるとは言い切れない。仮にArmベースCPUがPC市場に浸透する転機が訪れるとすれば、それはハードウェア性能とソフトウェア互換性の双方が一定水準を超えた時点であろう。今回のNvidiaの動きは、その条件のひとつを静かに満たし始めた可能性を示唆している。
Source:PCGamesN