ハードウェア分析ツール「AIDA64 Extreme」の最新パッチノートにおいて、「Radeon RX 7300(Navi 33)」の存在が新たに確認された。情報源は著名なリーカーGray(@Olrak29_)であり、この未発表GPUが現行の高価格帯シングルスロットGPU市場に一石を投じる可能性があると注目を集めている。
RX 7300は、最大190WのTDPを持つRX 7600 XTと同じNavi 33アーキテクチャに基づいているが、低消費電力志向で設計された廉価モデルである可能性が高い。業界関係者のKepler(@Kepler_L2)は、わずか4基のRDNA 3コンピュートユニットを想定した極小構成「Navi 33 Ultra Lite」の存在に言及しており、同GPUの性能水準は限定的と見られる。
一方で、75W以下の電力枠での高クロック運用が可能である点から、一定の実用性を持つ製品となる可能性も否定できない。AMDからの公式発表はなく、その存在や市場投入時期については依然不透明なままである。
AMDが仕掛ける低電力GPU戦略 Radeon RX 7300の技術的背景

AIDA64 Extremeのパッチノートに記載された「Radeon RX 7300(Navi 33)」の名称は、AMDが再びエントリークラスのGPU市場へ本格参入する布石である可能性がある。
RX 7300に用いられると見られるNavi 33は、既にRX 7600 XTで採用されているが、そのTDPは190Wと高く、シングルスロットには不適合とされる。一方で、RX 6400が53Wの低TDPで市場に投入された前例を鑑みるに、RX 7300も同様に極めて省電力かつ小型フォームファクタ向けに設計されていると見る向きが強い。
注目すべきは、Keplerが言及した「4基のRDNA 3 CU(Compute Unit)」という構成である。この構成は、Ryzen Z1 Extremeに内蔵されているGPUの3分の1に過ぎず、AMDが仮にこの構成で製品化する場合、大量の無効化ダイを出荷するという非効率性を抱えることになる。これが意味するのは、当該チップが歩留まりの低いウェハ処理で生じた欠陥品の活用先として想定された可能性である。
AMDは現時点でRX 7300に関する公式声明を一切発していないものの、現行のローエンドGPU市場の価格停滞と製品陳腐化が続く中で、消費者側の需要は確実に存在している。製品仕様が明らかとなれば、単なるリークの域を超えた市場転換の兆候として評価されることになるだろう。
シングルスロットGPU市場の空白 RX 7300がもたらす価格構造の転換点
現在、ローエンド帯のディスクリートGPU市場においては、NVIDIAのGeForce GT 1030のような旧世代モデルが依然として100ドル超の価格を維持し続けている。2017年に登場した同GPUが、いまだに実用的選択肢の1つとされている状況は、製品革新の停滞を象徴している。この空白を埋める可能性が指摘されるのが、今回リーク情報により存在が示唆されたRadeon RX 7300である。
RX 7300が低電力かつ小型設計であれば、サブ100ドル帯の価格設定と相まって、コンパクトPCや業務用端末向けに広範な需要が見込まれる。
特に、75WのPCIeスロット給電のみで駆動可能なGPUとして設計されれば、追加電源不要という点で既存の構成を変えずに導入可能な強みを持つ。これは既存製品に対して明確な優位性となりうる。ただし、実装されるCU数が極端に少ない場合、パフォーマンス面での妥協も避けられない。
Navi 33のフル構成が32基のCUを有するにもかかわらず、4基あるいは8基のみを有効化したSKUを出荷することが現実的かどうかは慎重に見極める必要がある。AMDが同ダイの歩留まり管理と価格戦略をどのように両立させるかにより、この製品が単なる市場補完にとどまるか、新たな価格構造の基準点となるかが決まることになる。
Source:HotHardware