ハードウェア診断ツールAIDA64の最新ベータ版において、AMD未発表のグラフィックスカード「RX 7300」の記載が確認された。この情報は、NVIDIAのRTX 5060および5070と共にリスト化されており、既存の製品ラインナップには存在しない型番であることから、業界内に波紋を広げている。

本GPUに関する公式情報は一切公開されておらず、一部ではアジア圏の無名OEMによる流通や、ソフトウェア開発者が未確認仕様を先行的に反映した可能性も指摘されている。AMDのRDNA 3世代ではRX 7600が最下位モデルであるが、その下位に位置づけられる製品の登場は想定されていなかった。

極めて低スペックな「Navi 33 Ultra Lite」構成という仮説もあるが、統合型GPUの性能向上を踏まえると実用性には疑問が残る。正式発表がない現時点では、真相は依然として不透明なままであり、5月のComputexに向けて注目が集まっている。

未発表のRX 7300がAIDA64に登場 現行製品体系との不整合が混乱を招く

ハードウェアベンチマークツールAIDA64の最新ベータ版において、AMD未発表の「Radeon RX 7300」が対応GPUリストに含まれていたことが判明した。通常、AIDA64は正式発表された製品を対象にサポートを追加しており、未確認の製品が突如現れるケースは極めて異例である。

今回の事例では、同リストにNVIDIAの未発売モデルであるモバイル向けRTX 5060および5070も記載されており、今後の市場投入を想定した内部的な準備段階の可能性も示唆されている。

AMDの現行のRDNA 3アーキテクチャに基づくローエンドGPUはRX 7600が最下位モデルとされており、その下位となるRX 7300の存在はこれまでに公式言及されていない。

VideoCardzによる報道では、アジア市場の一部において無名OEMが独自に搭載して流通させているとの仮説が挙げられているが、信憑性には疑問が残る。また、過去にリークされた「Navi 33 Ultra Lite with 4 CUs」との関連性を指摘する向きもあるが、具体的仕様や製品戦略の全貌は明らかでない。

AIDA64の開発元がなぜこの製品情報を事前に実装したのか、あるいは単なる誤認識であるのか。いずれにせよ、AMD公式の発表がないままこうした情報が流通することは、関係者間の混乱を助長する要因となっている。

RX 7300投入の可能性と市場構造の変化への示唆

RX 7300が仮に存在するのであれば、それはAMDが極端にローエンドなGPU市場へ再び足を踏み入れることを意味する。近年、統合型GPUの性能向上により、低価格帯のディスクリートGPUは存在意義を失いつつある。

とりわけ、4基の演算ユニット(CUs)のみを備えた「Navi 33 Ultra Lite」のような構成では、最新のRyzenやIntelの内蔵グラフィックスに対して競争力を持つとは考えにくい。軽量ノート向けに特化した製品であったとしても、その投入意義は限定的となる。

また、仮にこのGPUがOEM向け専売モデルであった場合、市場全体に与えるインパクトは限定的であり、リテール市場には登場しない可能性が高い。

それにも関わらずAIDA64が先行して対応を行っている点は不可解であり、同ツールが将来の製品に対する情報を非公式ルートで取得した可能性も否定できない。もっとも、ソフトウェアベンダーによるミスの可能性も依然として残されており、現時点では事実関係を断定することは困難である。

一方で注目すべきは、5月21日のComputexでの発表が噂される「RX 9060 XT」であり、ミドルレンジ市場におけるNVIDIA RTX 5060との競争軸が本筋であると見る向きが多い。RX 7300の存在は、そうした主要戦略とは異なる位置づけであるがゆえに、仮に実在していたとしてもサプライズ的な側面が強い。製品の有無にかかわらず、今後の展開には慎重な観察が求められる。

Source:TweakTown