IonQは2025年1~3月期において、1株あたり14セントの調整後赤字を計上し、前年の19セントから赤字幅を縮小した。売上高は7.56百万ドルで市場予想と一致し、次期(4~6月期)の売上予想も17百万ドルと見込まれており、こちらもコンセンサスに合致した。

一方で、IonQはLightsynq TechnologiesやID Quantique、Qubitekkといった量子関連企業の買収を矢継ぎ早に進めており、量子ネットワーク分野の強化を図る姿勢が明確になった。これを受けて、同社株は時間外取引で1.7%上昇したが、年初来では依然31%の下落が続く。

量子コンピューティングは従来型コンピュータでは解けない複雑な問題に挑む革新技術であるが、商業化までの道のりには依然不透明さが残る。Nvidiaを巻き込んだ技術的到達時期への懸念が、市場の神経質な値動きに影を落としている。

四半期決算は市場予想と一致 IonQの収益構造はなお過渡期にある

IonQは2025年1〜3月期において、前年同期の19セントの赤字から14セントへと損失幅を縮小し、調整後ベースでの赤字ながら市場予想に合致した。売上高は7.56百万ドルで横ばいであり、こちらもコンセンサスの7.52百万ドルと整合している。次期(4〜6月期)の売上見通しについても、同社は17百万ドルをガイダンスとして示しており、市場が予想する16.9百万ドルとほぼ同水準であった。これらの数字は、量子コンピューティングという黎明期の分野において、IonQが一定の実績を重ねていることを裏づける結果といえる。

ただし、収益基盤としては依然として確立途上にあり、黒字化の明確な道筋が示されているわけではない。量子計算の商業的応用は未だ初期段階にあり、企業価値は将来的な技術展開と市場規模拡大への期待に大きく依存している。四半期ごとの収支改善が一定の評価を得ているとはいえ、それは安定した成長軌道を意味するものではなく、むしろ投資家にとっては継続的な注視が求められる状況といえる。

量子企業買収の連鎖が示すIonQの戦略的意図

IonQは2025年に入り、買収戦略を加速させている。今期の決算発表と同時に、ボストンのスタートアップであるLightsynq Technologiesの買収を発表し、さらにスイス拠点のID Quantiqueの過半数株式取得を完了したと明かした。これに先立ち、2024年には量子ネットワーキング企業であるQubitekkの買収も実施しており、量子通信や量子メモリといった周辺技術への関与を広げている。これらの動きは、IonQが量子演算機単体の製造企業から脱却し、広範な量子エコシステムを形成する構想を描いていることを示唆している。

とりわけLightsynqは、ハーバード大学出身の研究者らによる量子メモリに特化したスタートアップであり、高度な専門性と将来の技術資産を抱える存在である。このような専門技術の取り込みは、IonQが単なる製品提供企業にとどまらず、量子技術の標準化や通信インフラまで含めた業界基盤構築を見据えている可能性を感じさせる。今後は買収した技術群をどのように統合・商業化していくかが、成長の鍵を握る局面となる。

量子コンピューティング市場の評価は期待先行 Nvidiaとの関連でも揺れる

量子コンピューティング株全体が2025年に入り不安定な値動きを見せるなか、IonQ株も年初来で31%の下落を記録している。今回の決算後には時間外取引で1.7%の上昇を見せたが、それは決して底打ちを示すものではない。市場のセンチメントは、量子技術の商業化タイミングに対する不確実性に強く左右されている。Nvidiaが量子技術に関連して取り沙汰されたこともあり、業界全体の将来像に対する期待と不安が交錯している状況にある。

量子コンピューティングは超伝導チップや量子ビットといった極めて高度な技術を要し、従来型コンピュータでは不可能な計算を可能とするが、その実用化には冷却技術や誤り訂正の分野など多くの技術的課題が残されている。市場は「次に来る大変革」としての期待を抱く一方で、それが現実の収益モデルに結びつくまでのギャップに対して神経質になっている。技術革新のスピードと投資家の期待の間にズレが生じており、その修正が価格変動として現れているのが現状である。

Source:investors business daily