アプリ収益化支援を手がけるAppLovinが、2025年1~3月期において広告収益の急増により、売上高14億8000万ドル・1株利益1.67ドルと市場予想を大きく上回った。前年同期比では利益が149%増、売上も40%増と大幅な成長を記録。広告収益は71%増の11億6000万ドルに達し、主力事業としての地位を鮮明にした。

同時に、収益が低迷するアプリ事業を英Tripledot Studiosへ4億ドル相当で売却する契約も発表。売却完了は第2四半期を予定しており、今後は広告とソフトウェア事業への集中が見込まれる。株価は時間外取引で14%以上急騰し、投資家の期待を映した格好だ。

広告事業が収益の牽引役に転換 前年同期比71%増のインパクト

AppLovinの2025年1~3月期決算では、広告事業の収益が前年同期比71%増の11億6000万ドルに達したことが最大の驚きである。従来型のアプリ提供型モデルから、広告ベースのプラットフォームへと本格的に軸足を移した結果とみられる。これは市場予想の55%増という水準を大きく上回り、株式市場に強い好感を与えた。

同社の主力であるマーケティング支援ソフトウェアは、アプリ開発者によるマネタイズ最適化に寄与しており、収益の質と継続性を高めている。今後の予想でも第2四半期の広告売上を12億ドル以上と見込んでおり、広告基盤の成長が引き続き業績を支える構図が明確になっている。

一方で、短期的な利益急増が永続的な成長に直結するかは依然として不透明である。AI広告やストリーミングTV分野への拡張戦略の成熟度、競合との技術差など、成長の持続性を測る指標には今後の検証が必要とされるだろう。

ゲーム事業売却で事業構造を刷新 Tripledotとの提携に込めた狙い

AppLovinは、収益減少が続いていた自社のモバイルゲーム部門を英Tripledot Studiosへ売却することで、事業ポートフォリオを大きく再編した。売却額は現金4億ドルに加え、Tripledotの普通株式約20%相当の取得を含む。この取引により、同社はリスクの高いゲーム開発領域から撤退し、広告プラットフォームおよびSaaSモデルへの集中を強める。

この動きは、長年同社を悩ませてきた収益の不安定性を改善する布石と考えられる。アプリ事業の売上は14%減少しており、同部門の収益構造は成長セグメントとは乖離があった。今後はTripledotとの資本関係を通じて間接的な利益享受を狙う一方、人的・財務的リソースはより高収益な領域に再配置されることになる。

ただし、ゲーム事業がもたらしていたブランド認知やユーザー獲得面の効果を完全に代替することは容易ではない。今回の構造改革は、収益の質を高める戦略と評価できるが、広告領域に過度に依存するリスクも内在しており、次の成長ドライバーの明示が今後の焦点となる。

株価14%急騰の背景にある市場の期待と懸念

AppLovinの株価は、2025年5月7日の時間外取引で14%超の急騰を記録し、346.65ドルに達した。これは好決算および構造改革への評価が市場に浸透した結果と見られる。特に、ファクトセットの市場予想を大きく上回る1株利益1.67ドル、売上高14億8000万ドルという実績は、投資家のリスク許容度を引き上げる材料となった。

また、同社がJefferiesのアナリストJames Heaneyから「強気の材料」として評価された点も、機関投資家の買い意欲を刺激した可能性がある。一方で、かねてよりショートセラーの標的となっていたAppLovinが再評価される契機ともなり、空売り解消の買い戻しが一部株価押上げに寄与したと考えられる。

もっとも、今回の上昇が短期的なイベントドリブンの反応で終わるか否かは、次の四半期以降の成長持続性にかかっている。AIやストリーミング関連の新規事業がどれほど業績に寄与できるか、投資家の視線は中長期的な事業変革の実効性に移りつつある。

Source:investors business daily