バークシャー・ハサウェイが現在注目する3つの投資先として、エネルギー大手シェブロン、小売再編を進めるクローガー、そして世界最大のEVメーカーとなった中国のBYDが挙げられている。シェブロンは原油需要が今後も数十年続くとの予測の下で、配当利回りと規模の優位性が評価されている。
クローガーはプライベートブランドとデジタル広告収益を軸に再成長し、株主還元でも成果を上げている。BYDは2024年に427万台の電動車を販売し、テスラを抜いて市場首位となった。バフェットの一部売却はあくまで戦略的判断であり、今なお長期的価値を見出していると考えられる。
バフェットが再評価したエネルギー戦略 シェブロン投資に込めた持続的収益への布石

シェブロン(CVX)は、2020年のパンデミック中にバフェットが初取得して以来、現在ではバークシャー・ハサウェイの第5位にあたる160億ドル相当の主要銘柄となっている。原油需要は米エネルギー情報局の予測によれば、2030年以降も減少には転じず、エネルギー転換の遅れと地政学的リスクを背景に中長期的な供給制約が続くと見られている。こうした環境下において、時価総額業界3位のシェブロンが有する交渉力と運営効率は、長期的競争優位の源泉である。
同社の配当実績は38年連続の増配と安定性が際立っており、利回りは5%近くに達している。これは、バークシャーが重視する「確実に時を刻むような配当」の象徴とも言える。また、2022年末以降の株価下落により、過去数年で最も割安な水準にある点も、買い増しの好機と捉えられている。短期的な業績低迷やトランプ前政権の供給過多に起因する価格圧力は存在するが、バフェットは市場の短期的ノイズを超えた構造的要素に着目している。
供給網の再編、埋蔵資源の減少、新規開発の難航といった背景は、資本集約型かつ技術志向の石油業界において、シェブロンのような巨大企業の存在価値を一層高める要因となる。バフェットの継続的な保有姿勢は、今後も同社が安定収益源としてポートフォリオを支えると見込んでいる証左と読み取れる。
クローガーの収益構造改革 デジタル戦略とPB事業が示す成長力
食料品市場において長らくウォルマートやアマゾンに押され気味だったクローガー(KR)は、近年、自社ブランド強化とデジタル広告ビジネスへの転換で着実な再成長を遂げている。同社が展開するプライベートブランド「Our Brands」は2024年の売上高の22%にあたる320億ドルを占め、利益率の高い収益源として確立されている。さらに、Kroger Plusによるロイヤルティ施策や広告販売によって、13億5000万ドルの営業利益を新たに生み出すなど、事業構造における変革が進行している。
クローガーのデジタル化は流通業界の中でも先進的であり、リテールメディア領域での存在感は年々高まっている。ブランド側の広告出稿による収益構造は、従来の物流主体モデルからの脱却を示しており、Amazonのようなテック企業との競争環境でも新たな立ち位置を確立しつつある。業績面でも過去5年、20年、30年にわたってS&P500指数を上回るトータルリターンを達成しており、投資家からの信頼を得ている点は特筆すべきである。
一方で、アルバートソンズ買収の頓挫や元CEOの辞任など、経営面の不確実性も払拭されたわけではないが、それらが業績へ直結する懸念は限定的と考えられている。バークシャーが5000万株、36億ドル分を保有し続けているという事実は、クローガーの中長期的成長ポテンシャルが依然として高く評価されている証拠であろう。業界内における再評価の動きも見逃せない。
BYDが主導するEV新時代 世界最大EVメーカーの地位をどう読み解くか
中国の電気自動車(EV)メーカーBYDは、2024年における電動車販売台数で427万台を記録し、テスラを抜いて世界首位に立った。バークシャー・ハサウェイは現在、同社の株式を5420万株(約27億ドル相当)保有しており、これは過去に一部売却されたものの依然として主要投資先のひとつである。
BYDの成長は、国際エネルギー機関(IEA)が示すEV保有台数の将来的拡大予測とも符合しており、2030年には2億5000万台、2035年には5億2500万台という見通しが示されている。
こうした中で、BYDの強みは単なる販売台数の多さにとどまらず、ハイブリッド車とEVを統合的に扱う柔軟な製品戦略にある。製造拠点の自社一貫体制、コスト競争力、そして中国国内外での市場展開スピードは、テスラとの対比においても独自性を際立たせている。バフェットによる過去の部分売却は、株主還元や市場調整を考慮した戦略的措置に過ぎず、企業そのものへの信頼が損なわれたわけではない。
現在の米国ではEV需要に一時的な鈍化も見られるが、欧州・中国・新興国においては政府支援やインフラ整備が進んでおり、BYDにとっての外部成長余地は依然大きい。このようなグローバル市場での優位性と製品開発力の両立は、今後の世界的EVトレンドを左右する鍵となる可能性がある。BYDが保つ時価総額と業界内地位は、今後さらに注目されることになるだろう。
Source:The Motley Fool