クアルコムは2025年9月のSnapdragon Summitにて、新型モバイルチップセット「Snapdragon 8 Elite 2」を発表すると見られている。TSMCのN3Pプロセスを用いた3nm設計に、Oryon Gen 2のCPUコア構成(プライム×2、パフォーマンス×6)を採用し、前世代で存在した省電力コアを排除するなど、性能最優先の設計方針が際立つ。

本チップセットには、演算性能が100 TOPSに達するHexagon NPUや、グラフィックス処理を30%強化したAdreno 840 GPUが組み込まれ、AI処理およびゲーミング機能の飛躍的な向上が期待されている。4.4GHzの高クロック動作や16MBのL2キャッシュ搭載も特徴的だ。

フラッグシップ機のGalaxy S26 UltraやXiaomi 16への搭載が予測される中、AnTuTuスコアは380万超と報告されており、前モデルを大幅に上回る。AppleのA19との競争軸においても、次世代スマートフォン市場における基準を再定義する存在となるか注目が集まる。

Oryon Gen 2と100 TOPS NPUが拓く処理性能の新境地

Snapdragon 8 Elite 2は、TSMCの3nm N3Pプロセスを用いた製造によって、高密度・高効率な半導体設計を実現している。これにより、従来モデルよりも電力効率を維持しながら、処理能力を飛躍的に高めることが可能となった。

注目すべきは、プライムコア2基とパフォーマンスコア6基で構成されるOryon Gen 2のCPU設計であり、エネルギー効率重視のコアをあえて排除することで、瞬発的なパフォーマンスを最大化する構造に刷新されている点にある。

一方、Hexagon NPUは100 TOPSという驚異的な性能を発揮し、AI処理領域における競争力を大きく引き上げている。写真・映像処理や自然言語解析など、多層的なAI推論においてリアルタイム処理を可能とし、アプリケーションの即応性と精度の両立に寄与する。

Armv9アーキテクチャに対応することで、SME 1およびSVE2によるベクトル演算の最適化も進み、生成系AIやモバイルエッジAI処理にとって実用的な基盤となる。

このような構成は、性能の絶対値だけでなく、AI主導のユーザー体験においても主導的役割を果たす可能性がある。エンドユーザーが直接触れる表面的な快適さの裏で、演算資源の再配分という根本的な戦略転換が進んでいることは見逃せない。

Adreno 840とディスプレイ技術の進化が示すUX革新の兆し

Snapdragon 8 Elite 2に統合されたAdreno 840 GPUは、L2キャッシュ容量を16MBへと拡大し、従来比で33%の増強を達成している。これにより、グラフィックス処理能力は約30%向上するとされ、高負荷環境下でも滑らかなレンダリングを維持できる基盤が整った。特にゲーミング用途やAR/VR分野におけるレイテンシ低減と映像品質の向上は、ユーザー体験の質的飛躍をもたらす可能性がある。

また、ディスプレイ制御技術の精緻化により、輝度制御が従来よりも高度化されており、外光下における視認性やダイナミックレンジの最適化も図られている。これはHDR対応コンテンツの没入感を高め、視覚的快適性の面でも新たな基準を提示する技術進化と位置づけられる。AnTuTuベンチマークでの3.8百万超というスコアは、これら複合的な処理能力が実用域で発揮されていることを示唆している。

このように、GPUおよびディスプレイ技術の進展は、単なる数値的性能の誇示に留まらず、体験価値そのものの質を高める方向に向かっている。処理能力の向上が、知覚的満足度へと転換される設計思想が、次世代端末の基準を形作りつつある。

Source:Gizmochina