ドナルド・トランプ大統領が、バイデン政権下で導入されたAIチップの輸出規制を撤廃する意向を示したことで、Nvidia株は急騰し、4月初旬の安値から25%以上上昇している。しかし、規制撤廃の代替として検討されているグローバルライセンス制度や新たな関税措置が、かえって厳しい通商環境を生む可能性もあるとCitiは警戒する。

一方で、バーンスタインやウォール街はNvidiaに依然として強気姿勢を保ち、個人投資家も11億ドルを投入。AI関連成長株としての期待は根強いが、今後の政策動向次第では株価の振れ幅が大きくなるリスクも否定できない。

AIチップ規制撤廃報道でNvidia株は25%超上昇も、政策の全容は不透明

ドナルド・トランプ前大統領がAIチップの対中輸出に関する規制撤廃を示唆したことを受け、Nvidia株は急騰し、4月初旬の安値から25%以上の反発を記録した。報道によれば、バイデン政権下で導入されたAI拡散規則が「過度に複雑」であるとの批判があり、トランプ氏はこれをより簡素な枠組みに置き換える意向を持っているという。この方針は短期的にはNvidiaにとって好材料と受け取られており、中国向けH20チップの出荷制限による業績悪化リスクが後退するとの見方が市場には広がっている。

ただし、こうした規制緩和が中長期的にNvidiaに安定的な追い風となるかは依然として不透明である。新たに検討されているグローバルライセンス制度は、従来よりも厳格な運用となる可能性が指摘されており、対中半導体輸出に新たな政治的制約が加わるリスクもある。また、ホワイトハウスが半導体に対して最大25%の関税を検討している点も、将来の業績に暗い影を落とす要因となり得る。短期的な株価上昇に過度な期待を寄せるのではなく、政策の実施プロセスと市場の反応を慎重に見極める姿勢が求められる。

バーンスタインとJPMorganはNvidiaの長期成長を依然強く支持

政策の不確実性が残る一方、ウォール街はNvidiaに対して引き続き強気な評価を下している。特にバーンスタインは、同社のAI事業に関して「まだ初期段階であり、成長余地は極めて大きい」として、目標株価を185ドルに設定している。これは現行水準から55%超の上昇余地を見込んだもので、データセンター分野を中心としたAI関連収益の拡大が今後も続くという前提に基づく。AI需要の急伸に支えられた半導体需要は構造的であり、Nvidiaがその中核を担うとの評価が明確だ。

さらに注目されるのは、個人投資家の旺盛な資金流入である。JPMorganのデータによれば、リテール投資家は直近1週間で11億ドルをNvidia株に投入しており、短期筋のみならず長期保有を見据えたエントリーが広がっていると考えられる。この背景には、NvidiaがAI革命の恩恵を最も強く受ける企業と見なされていることがある。ただし、これらの投資が短期的なセンチメント主導である場合には、政策リスクが顕在化した際に急速な資金流出に転じるリスクも否定できない。高評価と期待が先行する状況こそ、市場参加者には冷静なリスク認識が求められる局面といえる。

Source:Barchart