Nvidiaが次世代GPU「RTX 5060」のレビュー解禁直前までドライバー提供を行わない方針を採ったことで、複数の専門メディアが強く反発している。8GB版RTX 5060 Tiでの性能問題が再燃する中、同様の手法により製品評価の遅延が意図的に図られているとの指摘が相次ぐ。

TechSpotやHardware Unboxedなどの報道によれば、5月19日の発売日までに必要なソフトウェアが提供されず、第三者による検証が事実上不可能な状況にある。これは、8GB版が性能でIntelの下位モデルにさえ劣るという過去の評価を受け、ネガティブな論調を封じる意図があるとの見方も否定できない。

また、Computexと時期が重なることで、有力メディアによる迅速な分析が困難になることも問題視されている。300ドル帯で最も普及が見込まれるRTX 50シリーズの中核モデルであるがゆえに、こうした透明性の欠如は市場に大きな影響を及ぼす可能性がある。

RTX 5060レビュー遅延の構図とドライバー提供の慣例崩壊

Nvidiaは5月19日のRTX 5060発売に先立ち、レビュー用のドライバーをメディアに事前提供しない方針を採った。これにより、TechSpot、Hardwareluxx、PC Games Hardware、Igor’s Labなどの専門メディアが、発売日まで独立した性能検証を行えない状況となっている。GPUがドライバーなしでは適切に動作しないという技術的制約上、正確なベンチマークや検証が困難になるのは必然である。

本来、新製品のドライバーは報道解禁日前に共有されるのが業界慣行であり、30年以上にわたり踏襲されてきた通例である。特にグラフィックボードのような高度なハードウェアにおいては、事前検証こそが信頼性ある購入判断を下す前提となる。そうした中、今回のNvidiaの対応は従来の透明性に背を向けるものであり、消費者保護という観点からも問題視されるのは避けられない。

この慣行の断絶が意味するのは、単なる手続き上の遅延ではない。レビュー不在という情報の空白が形成されることで、マーケティング主導の印象形成が先行し、消費者の判断力を損なう危険性が高まる。メディアと読者の信頼関係を無視した販売戦略が常態化すれば、業界全体の信頼構造にも亀裂が入りかねない。

メモリ容量による性能格差と価格帯の整合性に対する疑義

過去の事例として8GB版RTX 5060 Tiのレビュー解禁遅延があったが、その後の検証で16GB版と比べて顕著な性能差が露呈した。具体的には、Intelの12GB Arc B580にさえゲーム性能で劣る場面が確認されており、VRAM容量の不足が実際の使用環境で明確な制約となっている。

今回も同様の構図が懸念されている中で、RTX 5060の8GB仕様に関する事前レビューが封じられることで、同様の事態の再発を警戒する声が高まっている。

300ドルという価格帯は、一般ユーザーが最も多く購入を検討するゾーンであり、Steam調査でも同モデルが最も普及するRTX 50シリーズになるとの見通しが示されている。そのため、実際のパフォーマンスが価格に見合うか否かを測る公正な指標が必要とされるが、ドライバー提供の遅延によってその機会が奪われている。

特に2025年時点において8GBのVRAMでは、多くのAAAタイトルにおいて中画質以下での運用を強いられることが多く、フレームレートやテクスチャ品質で明確な差が生じる。

12GBが主流となりつつある現状に照らせば、RTX 5060が価格に見合った価値を提供するのかは極めて不透明である。メインストリームGPUとしての立場を維持するには、単なるスペック表記ではなく、使用実感に基づく性能評価が不可欠である。

Source:TechSpot