Appleは報告書の中で、中国製品への高関税の影響により、自社製品の価格を引き上げる可能性を初めて公式に示した。背景には、トランプ政権による最大145%の関税措置があり、これによりApple株は年初来で20%以上の下落を記録している。一方で、同社は健全な財務体質を維持し、1株あたり利益の増加やサービス部門の2桁成長を背景に、1,000億ドルの自社株買いと配当増額を発表。

中国依存の緩和や新製品群の投入により、長期成長の基盤は堅固との見方も強い。市場では価格転嫁による需要減少を懸念する声もあるが、平均目標株価は現水準から約17%の上昇余地があるとされ、アナリストの多くが依然「買い」評価を維持している。

関税がAppleの価格戦略に与える現実的影響

Appleは、製品とサービス価格を見直す可能性に言及し、高関税が収益構造に及ぼす現実的な影響を示唆した。特に、中国製品に対する125〜145%の追加関税が再び導入される懸念が再燃するなか、同社が生産の約8割を中国に依存している事実は見逃せない。仮に関税が再強化されれば、コスト上昇分を価格転嫁せざるを得ない状況が現実味を帯びてくる。

トランプ前大統領が主導した一連の関税政策は、Appleに限らず多くのグローバル企業に打撃を与えたが、今回Appleが自らその影響を認めた点は注目に値する。アナリストの間では、価格上昇が需要減退を招くとの警戒感も広がっており、消費者の購買行動が今後の収益見通しを大きく左右する構図となる。

一方で、現状ではiPhoneなど一部製品が関税対象から外れている点も見逃せない。そのため、短期的には価格安定を維持できる余地があるものの、貿易交渉の行方次第では状況が一変する可能性もある。Appleにとって、価格戦略と国際情勢の双方を慎重に見極める姿勢が求められている。

サービス部門の成長が支えるAppleの収益構造

Appleは最新の四半期決算で、売上高954億ドル、1株利益1.65ドルといずれも市場予想を上回る実績を報告し、同社の収益構造が依然として堅固であることを示した。特に注目すべきは、プロダクト部門の成長率が2.7%と鈍化する一方、サービス部門は11.6%の2桁成長を遂げ、全体の業績を下支えしている点である。

このサービス部門の成長には、有料サブスクリプションが10億件を突破したことが大きく貢献しており、アクティブデバイス数20億台超というエコシステムの強靭さが改めて証明された。Apple MusicやiCloud、App Store課金といった継続課金モデルが、安定的な収益源となっている。

製品販売が外部要因に左右されやすい中で、サービス収益は為替や地政学リスクの影響を受けにくく、Appleのバリュエーションにおいても重要な評価項目となる。将来的な景気後退や価格上昇のリスクを考慮しても、同部門の成長継続が全社の安定性を高める要因である点は重視すべきである。

株主還元策が下支えする投資家心理

Appleは今四半期、1,000億ドル規模の自社株買いと1株あたり0.26ドルへの配当増額を発表した。これにより、株価の下落局面においても投資家心理を支える明確なメッセージを市場に発信した格好である。同社の現金保有額は282億ドルと潤沢であり、短期負債を大きく上回る余力がある点も株主還元の実効性を支えている。

特に自社株買いの規模は、過去の実績から見ても最大級であり、需給面から見ても下値を支える要因となり得る。アナリストの評価でも「強い買い」「ホールド」が大勢を占め、平均目標株価は現在値より17%上方に設定されている。このような株主重視の姿勢は、逆風下でも評価されやすい。

ただし、自社株買いが企業価値そのものを根本から押し上げるわけではなく、長期的には事業の持続的成長こそが本質的な評価に繋がる。Appleはその点でも、新製品やAIチップなど将来需要を見据えた布石を打っており、株主還元と成長戦略のバランスが今後の焦点となる。

Source:Barchart