Tiny Corpが、USB3.0経由でAMD製外付けGPUを動作させる世界初の手法を公開した。Apple Silicon搭載MacやLinux、Windows上で動作し、専用ドライバ不要でlibusbベースの通信を実現している。これにより従来非対応だったApple Silicon環境でもAI処理用途におけるeGPU活用が可能となった。

この手法ではASM2464PDチップ搭載のアダプタとAMD RDNA 3/4 GPUを用い、PCIe通信なしで計算処理をオフロード。Thunderbolt非搭載機器でも外部GPUの利用が見込める可能性がある。ただし、USB3の帯域制限や特殊な構成、処理速度の制約は依然として存在しており、あくまで試験的な段階にとどまる点には注意が必要だ。

USB3接続でRDNA 3/4 GPUが稼働 Tiny Corpが示した非PCIe接続の可能性

Tiny Corpは2025年5月、USB3.0インターフェース経由でAMD RDNA 3およびRDNA 4 GPUを外付け接続し、計算処理を実行可能にする技術を発表した。これまで外付けGPUの接続にはThunderboltやUSB4といったPCIeトンネリング対応の高速バスが必須とされてきたが、今回の実装では、ASM2464PDチップを内蔵したADT-UT3Gアダプタを利用することで、PCIe信号を経由せずにGPUとの通信を成立させている。ドライバにはlibusbを用い、macOS(Apple Silicon)、Linux、Windowsいずれの環境にも対応しており、カーネル改変も不要という利点がある。

この方式では、GPUにモデルをロードする速度や処理効率でPCIeに及ばない点も見られるが、デバイス本体にeGPU用ポートを持たないシステムでもGPU演算の恩恵を受けられる新たな選択肢となる。Tiny Gradのmasterブランチに機能がすでに統合されていることから、理論上は互換性のあるハードウェアさえ揃えばすぐに運用が可能となる。eGPU運用に制限を受けてきたApple Silicon環境にとって、このアプローチは試験的ながら突破口となるかもしれない。

通信帯域と安定性に課題も “ハック的”な構成がもたらす現実的な制約

このUSB3.0ベースのeGPUソリューションは、通常のThunderboltやUSB4に比べて通信帯域が大きく制限されている。USB3.0は理論上最大10Gbpsであるものの、GPUとのやり取りにおいてはPCIeのような低レイテンシと帯域幅が不可欠とされており、実際の利用ではモデル転送やカーネル実行で顕著な待ち時間が生じる可能性がある。また、ASM2464PDのようなチップは本来PCIeトンネリングを前提とした設計であり、USB3.0単独での運用は既存仕様にない使用法であるため、安定動作を保証するものではない。

さらに、この技術はカーネルドライバを介さずにユーザースペースで動作するカスタムドライバによって実現されており、現段階ではAMD製GPUのRDNA 3および4世代に限定されている。RDNA 2世代などへの対応も示唆されているが、安定性や性能面でのバリエーションは未知数である。汎用的なGPU拡張手段として確立するには、転送速度の課題やファームウェア調整の必要性など、技術的なハードルが依然として高い構成と言えるだろう。

Source:Tom’s Hardware