Intelは第13世代および第14世代のCore i7・i9「K」シリーズに発生していた「Vminシフト不安定性」への対応として、BIOS経由で適用可能な新マイクロコード「0x12F」をリリースした。この問題は主に長時間のアイドル状態や軽負荷環境で発生する電圧の変動に起因しており、特にゲーム用途などでの連続稼働中に安定性の低下が報告されていた。

今回のアップデートは、2024年9月に配布された「0x12B」の後継となるが、根本原因は依然未解決であることがIntelから明言されている。ただし、CinebenchやCyberpunk 2077などを用いたテストでは、パフォーマンスへの悪影響は見られないことが確認された。

「Vminシフト不安定性」再浮上により新マイクロコード0x12Fが公開

Intelは第13世代および第14世代のCoreデスクトップCPUにおける電圧制御の不安定性、いわゆる「Vminシフト問題」への追加対応として、新たにマイクロコード「バージョン0x12F」を提供した。この問題はCore i7およびi9の「K」シリーズで顕著であり、2024年9月の「0x12B」リリースでも完全な解消には至っていなかった。特にシステムがアイドル状態や軽負荷のワークロードで長時間稼働した際、電圧が想定より低く推移する現象が確認され、これがシステムクラッシュや処理停止の原因となっていた。

Intelは今回の更新で、こうした低アクティビティ状態での挙動を補正し、安定性を改善するとしている。CinebenchやSpeedometer 3などのベンチマーク、および『Cyberpunk 2077』などのゲーム実行時に性能への影響が見られなかった点も明らかにされた。DDR5 5600 MT/sメモリ環境での動作検証も実施されており、一定の条件下では安定性向上が見込まれている。

このマイクロコードは単体で完結するものではなく、最新のBIOSとUEFI設定内の「Intel Default Settings」有効化が前提とされる。これにより、今回の更新はマザーボードベンダー側の対応とも連動する形となっており、ユーザーにとっては設定確認とファームウェア適用の手間が実質的なハードルとなる。

システム稼働環境に依存する不具合と保証延長の意味

今回の事象は、明確なハードウェア欠陥というよりも、電圧制御アルゴリズムが高負荷よりも低負荷環境で想定外の挙動を示すという性質があり、使用状況によっては再現性が乏しいのが特徴である。初期の大規模報告例が韓国のeスポーツプレイヤーによる『鉄拳8』の検証であったことからも分かるように、極端な長時間稼働やスリープ直後の復帰といった特定条件下でのみ症状が現れることが多い。

こうした背景から、Intelは「根本原因は変わっていない」としつつも、対応策としてのマイクロコード更新とともに、該当CPUの保証期間を従来の3年から5年に延長している。この判断は、同社がリスク緩和と長期的サポートの両立を図っている姿勢を示すものであり、事実上、製品寿命にわたるフォローアップ体制の整備といえる。

保証延長は、将来的に同様の安定性課題が再浮上した場合でも修理や交換対象とする可能性があることを示唆しており、パフォーマンス志向のカスタム環境構築を行っている層にとっては大きな安心材料となる。ただし、BIOS更新やUEFI設定の変更を正しく行わない限り、マイクロコードの恩恵は反映されないため、運用知識の有無が安定性の鍵を握る。

Source:NotebookCheck