Nvidiaは、RTX 50シリーズ専用のフレーム生成技術「Smooth Motion」にVulkan対応を加え、DirectX 11/12に続く主要APIへの完全対応を達成した。Redditユーザーによって明らかにされた今回のアップデートにより、本技術はProtonやDXVKを通じたエミュレータ環境でも利用可能となり、古いVulkanベースのゲームタイトルでの活用範囲が広がった。
AMDの「AFMF」と同様にドライバーレベルで動作する本技術は、開発者側の対応を不要とし、互換性と導入の手軽さを兼ね備えている。ただし対応GPUは現状RTX 50シリーズのみに限られ、AMD製Radeonの広範な世代対応と比較して制約があるのも事実である。今後のRTX 40シリーズ対応のタイミングや、旧世代GPUへの拡張可否が注目される。
Vulkan対応による互換性の拡大とエミュレータ環境への影響

NvidiaはRTX 50シリーズ向けのドライバーベース技術「Smooth Motion」にVulkanのサポートを追加し、DirectX 11および12に続いて主要なグラフィックスAPIを網羅した。これにより、ProtonやDXVKを介したエミュレーション環境でもフレーム生成が可能となり、過去のVulkan対応タイトルにおけるフレームレートの改善が実現する。従来、この技術は主に最新ゲームを対象に想定されていたが、今回の拡張によってSteam DeckのようなLinuxベースのゲームプラットフォームや、RetroArchなどのエミュレータ環境にも適用できる実用性を獲得した。
また、AMDが展開するFluid Motion Frames(AFMF)と同様に、開発者による個別対応を要しない点は、フレーム生成技術の浸透において大きな優位性を持つ。ただし、現在の対応はRTX 50シリーズのGPUに限られており、AFMFが複数世代のRadeon GPUをカバーしている点と比較すると、普及の足取りには格差がある。将来的な対応拡張が公言されてはいるものの、現時点では具体的な日程や対応GPUの範囲が未定であることから、技術的な完成度と市場浸透率の間に乖離が残されている。
フレーム生成技術の構造的差異と市場評価
「Smooth Motion」はDLSS 3やDLSS 4のようにAIによる新規フレームの生成を行うが、それらがゲームエンジンへの組み込みを要するのに対し、「Smooth Motion」は完全にドライバーレベルで機能する点が大きな違いである。この構造により、ゲーム側の実装やアップデートを待たずに、ユーザー側の環境変更のみで恩恵を得られる柔軟性が確保されている。特に、既存タイトルへの適用性が高く、レガシーゲーム市場における価値向上にも直結する。
一方、AMDのAFMFはAIを用いず動作するため、フレーム生成の精度や自然さではNvidiaの技術に一歩及ばないとの見方がある。しかし、GPU対応範囲においてAFMFが現行世代から旧世代まで広範に対応している点は、実利用面での利便性を高めているといえる。加えて、Nvidiaが提供する「Smooth Motion」がRTX 30や20シリーズにまで拡張されない限り、技術的な優位性が市場全体のシェアに直結するかは不透明である。
今後、DLSSやAFMFとの比較だけでなく、ドライバーベースのAIフレーム生成技術そのものの用途拡大が鍵となる。対応GPUの広がりが進まない限り、「Smooth Motion」の真価は一部のユーザー層にとどまる可能性がある。フレームレート向上という即時的な恩恵の裏に、技術展開の速度と方針が問われている。
Source:Tom’s Hardware