台湾DigiTimesの報告によれば、NvidiaのGeForceグラフィックスカードを含む複数の製品で価格上昇が進行しており、一部では最大10%の値上げが確認された。トランプ政権による対中関税の一部緩和が実施された直後にもかかわらず、こうした価格改定が行われている背景には、AI向けGPUの対中禁輸措置、新たな関税適用、さらにBlackwellチップ製造のTSMC米国拠点移行に伴うコスト増があるとされる。
流通経路からの証言によると、これらの要因はすでに「システムに織り込まれている」とされ、価格上昇は一過性ではなく構造的なものとなる可能性が高い。加えて、米中貿易関係の不確実性も解消の見通しを遠ざけている。一方で、AMDによる対抗製品の投入に期待も寄せられるが、価格競争が発生するかどうかは不透明である。
台湾報道が指摘する価格上昇の実態と要因の多層構造

DigiTimesが伝えたサプライチェーン筋の情報によれば、NvidiaはGeForceシリーズを含む「ほぼすべての製品」で価格を引き上げており、最大で10%の値上がりが確認されている。Asus製RTX 5090など具体的な例も報告され、価格改定はゲーミング用途に限らず、AI向けGPUでも最大15%に及ぶ。背景には、AI対応GPUの対中輸出禁止や、新たな関税措置、そしてBlackwellチップの製造がTSMCの米国工場に移されたことによる製造コストの上昇がある。
これらの要素はそれぞれ単独でも価格に影響を与えるが、今回は複数の要因が同時に作用し、構造的なコスト高となって価格に転嫁されている。関税緩和の報道とは対照的に、現場の価格動向はむしろ逆行しており、短期的な価格下落の兆しは見られない。供給の逼迫とコスト増が組み合わさった状況では、Nvidia側も利幅維持のために価格調整を余儀なくされる構造にあると考えられる。
価格転嫁の連鎖が業界全体に及ぼす影響
パートナー企業もNvidiaの価格改定に追随しており、グラフィックスカード市場では広範な値上げが連鎖している。ユーザーは希望小売価格での購入がほぼ不可能となり、特にRTX 5000番台など新世代製品では、実売価格が大きく乖離する事態が常態化しつつある。この現象は、調達コストの上昇を末端価格へと転嫁する典型例であり、単なる一社の動きにとどまらず、業界全体の価格形成構造に影響を及ぼしている。
一方で、今後登場が噂されるAMDのRX 9060 XTなどが価格競争を促進する可能性も指摘されている。ただし、Nvidiaの価格戦略によってAMDに大きな圧力がかかっていないとの観測もあり、競争原理が有効に働くかは未知数である。全体としては、短期的に価格が落ち着く要因が見当たらず、消費者にとっては負担増が続く環境が形成されつつある。今後の価格動向には、製造体制の安定化と国際的な貿易政策の進展が鍵を握るだろう。
Source:TechRadar