バークシャー・ハサウェイのCEOであるウォーレン・バフェットが年内での退任を発表し、長年にわたる時代の終幕が近づいている。後継者にはグレッグ・アベルが予定される中、投資家は依然として「バフェット流」の選球眼を模範とし、堅実な価値株への注目を強めている。
記事では、同氏が好みそうな3銘柄として、配当利回り6.9%と強固なキャッシュフローが際立つアルトリア、地政学的リスクのヘッジとなる防衛大手ノースロップ・グラマン、そしてかつての盟友マンガーが強く推した中国のアリババを挙げている。いずれも割安性と長期的安定性を備え、バフェット哲学と整合する資質を有する。
新CEOのもとでは、米国中心の投資戦略から多極化の可能性も視野に入りつつあり、今後の銘柄選定の重心にも変化が生まれる兆しがある。
高配当と耐久性で選ばれるアルトリア 長期投資家の戦略に適合

アルトリア・グループ(NYSE:MO)は、一般にESG観点から機関投資家が敬遠しがちな煙草関連企業であるが、バフェットが好んできた「割安で収益力の高い企業」の条件に合致する特徴を複数備えている。同社は高水準の営業利益率を安定的に維持し、極めて優れたキャッシュフロー創出能力を有しており、その結果として株主還元に積極的な姿勢を取っている。配当利回りは6.9%と極めて高く、しかも毎年増配を継続している点は特筆に値する。
現在の株価バリュエーションもPER9.5倍と控えめであり、成熟市場においても投資家に実質利回りを提供できる点が評価されている。こうした指標により、景気循環の影響を受けにくいディフェンシブ銘柄としての特性が浮かび上がる。社会的評価とは別に、財務的な視点からは「長期保有に耐える収益基盤を持つ企業」と位置づけることができる。
現代の投資家にとっては、短期的な株価変動やESG規制への対応という課題も無視できない。しかし、バフェットの投資哲学が重視してきたのは「市場のノイズではなく、本質的な価値」である。アルトリアはまさにそうした本質に根差した企業であり、配当収入を重視するポートフォリオ構築においては依然として検討に値する存在となっている。
不確実性の時代における防衛関連の堅牢性 ノースロップ・グラマンの意義
ノースロップ・グラマン(NYSE:NOC)は、地政学的リスクが増大する現代において、リスクヘッジと長期成長性を兼ね備えた防衛産業の中核企業である。同社の収益構造は安定しており、近年は年率一桁台後半の成長を維持している。これは、国内外での軍需需要の増大を背景にしており、特に宇宙システムおよびミッションシステム部門の貢献が拡大している点が注目に値する。
バフェットが好む企業の特徴には、明瞭なビジネスモデル、高い参入障壁、継続的なキャッシュフロー創出がある。ノースロップ・グラマンは、まさにその条件を満たしており、防衛技術という特殊かつ不可欠な領域における独自性は群を抜いている。政府契約による長期的な収益の見通しも堅く、外部環境に左右されにくい構造が確立されている。
ただし、防衛業界は規制や予算変更の影響を受けやすく、成長の持続性には留意が必要である。今後、グローバルな緊張の緩和や政治的シフトが進めば、売上に影響を及ぼす可能性も否定できない。とはいえ、長期保有を前提とする投資スタンスにおいては、同社の堅牢な事業基盤と財務体質が大きな支えとなる。バフェットの投資原則に照らしても、安定性と成長性のバランスに優れた銘柄である。
米国偏重の終焉か アリババに見る新体制の布石
アリババ・グループ(NYSE:BABA)は、バフェットの長年の右腕であったチャーリー・マンガーがかつて強く支持した中国企業の代表格であり、米国外への分散投資の象徴的存在と見なされてきた。同社はクラウド事業とeコマースを両輪としながら、ここ数年は中国政府による民間企業への規制強化を受けて市場評価が著しく低下した。その結果、株価は割安水準にとどまり続けている。
バフェット自身はこれまで一貫して米国市場を主戦場としてきたが、次期CEOとなるグレッグ・アベルの就任により、投資対象地域の再定義が進む可能性も考えられる。中国市場における不透明性は依然として根強いが、逆にそれが長期投資家にとっては魅力的なエントリーポイントとなる局面もありうる。バリュエーションの面でもアリババは競争力を保っており、先進的なインフラ基盤と広大な顧客基盤は引き続き成長余地を示している。
米国一極集中の投資戦略が転機を迎える中、アリババのような銘柄に注目する姿勢は、時代の変化を先取りする柔軟性の象徴となるだろう。新体制の下で多様な市場へのアプローチが検討される場合、その先陣を切る可能性を持つのがこの企業である。価値基準の多元化と地理的分散が進むことで、バークシャーの投資哲学も新たな局面に入ることが予想される。
Source:24/7 Wall St.