米下院議員マージョリー・テイラー・グリーンが2025年に入り、すでに7度目となるテスラ(TSLA)株を取得したことが開示された。各回の購入額は1,001〜15,000ドルとされ、累積投資額以上にその継続的な投資姿勢が注目を集めている。背景には、グリーン氏が政府支出見直しの小委員会委員長を務めつつも、イーロン・マスクの経営に信頼を寄せる姿勢があると見られる。

一方、テスラ株は2025年初来で21%下落し、四半期決算では売上・利益・納車台数すべてが市場予想を下回った。欧中市場での販売減少やブランド毀損が重なり、成長神話に陰りが差す中、グリーン氏の行動は今後の企業価値回復を見越した中長期投資とみなされる可能性がある。投資家にとっては、政治的影響と企業成長力の狭間で意思決定が問われる局面にある。

テスラ株に繰り返し投資する米議員の行動が示す示唆

米下院議員マージョリー・テイラー・グリーンが2025年に入って7回目となるテスラ株の購入を行った事実は、単なる個人投資の枠を超え、政策と市場の交錯を示す象徴的な動きといえる。購入金額は1,001ドルから15,000ドルとされるが、注目すべきはその継続性である。グリーン氏はイーロン・マスク主導の政府支出削減小委員会の委員長という立場にありながら、企業への信認を明確に示している。このような議員の選択は、政治的立場と市場における実利的判断が両立しうることを映し出す。

この背景には、テスラが単なる自動車メーカーではなく、AIや再生可能エネルギーなど、政策的に注目される分野に深く関与していることがあると考えられる。テスラが開発する完全自動運転型ロボタクシーや低価格EVの展開は、公共交通とインフラ政策に直結するものであり、議員にとっても自国の技術主導権を支える存在として映る可能性がある。繰り返される株式購入は、そのような戦略的文脈に基づいた長期的評価の一端とも捉えられよう。

苦境にあるテスラ業績と株価推移の現実

テスラは2025年第1四半期決算で、売上高193億ドル(前年比9.2%減)、調整後利益9億3400万ドル(同39%減)、EPS0.27ドル(同40%減)と、いずれも市場の期待を下回る結果を示した。納車台数も13%減の33万6,681台に落ち込み、特に欧州と中国での需要低迷が鮮明となった。欧州市場では販売が37%以上減少し、中国ではBYDなど現地メーカーが競争を優位に進めている。こうした数字は、グローバルEV市場におけるテスラの競争力低下を浮き彫りにしている。

株価も52週高値の488.54ドルから約40%下落し、年初来では21%のマイナスと、いわゆるマグニフィセント・セブンの中でも最も下落率が大きい。かつての成長株が調整局面に入った現状では、短期的な値動きへの期待よりも、構造的転換の兆候として分析する必要がある。ブランド力の毀損やイーロン・マスクの政治的発言の影響を含め、消費者と投資家の両面で信頼の再構築が不可欠な局面といえる。

成長の鍵を握るロボタクシーと低価格EV戦略

決算発表後、イーロン・マスクが「政府関連の活動は週1〜2日に抑え、テスラに専念する」と述べたことで、株価は一時5%超の上昇を見せた。この反応が示すのは、投資家がマスクの集中度合いをテスラの価値と直結して捉えていることである。注目すべきは、同社が進める2つの成長プロジェクト―2025年前半の量産を予定する低価格EVと、2026年生産開始予定の完全自動運転車「サイバーキャブ」である。

とりわけ、6月にテキサス州オースティンで開始されるロボタクシーの試験運用は、技術の実用段階への大きな一歩となる。ただしこれは「監視付き自動運転」であり、商用化にはなお課題が残る。2025年のEPSは1.39ドルと前年から31.9%減の予想であるが、2026年には2.41ドルへの回復が見込まれており、市場はすでに成長シナリオを織り込みつつある。今後の焦点は、こうした先端プロジェクトが実需と収益にどこまで寄与するかであろう。株価の下値リスクと上昇余地の両面を見据えた戦略が問われる局面にある。

Source:Barchart.com