暗号資産取引所大手のCoinbase(ティッカー:COIN)は、2025年第1四半期決算で収益・利益ともに減少を示したが、Deribitの買収によってデリバティブ市場での競争力強化が期待されている。アナリストの評価は分かれる中、Canaccord Genuityのジョセフ・ヴァフィ氏は目標株価を400ドルとし、業界最高水準の見通しを提示。
現在の株価はピークからは乖離しているが、直近1か月で18%上昇するなど反発の兆しも見られる。Coinbaseは安定コインとサブスクリプション収益の拡大を通じた収益多様化を進めており、米ドル連動型ステーブルコインの保有残高も成長を下支えしている。
市場の変動性とマクロ経済の不透明さが短期的な懸念材料となる一方で、グローバル展開とサービス統合の戦略は中長期的な成長の鍵となりうる。Coinbaseは依然として暗号資産取引市場における象徴的存在とされ、今後の株価推移に注目が集まる。
Deribit買収による事業拡張とCoinbaseの戦略的布石

Coinbaseが実施したDeribitの買収は、暗号資産デリバティブ市場における存在感を飛躍的に高める契機となる。29億ドルで買収されたDeribitは、ビットコインとイーサリアムのオプション取引において世界的なリーダーとされており、Coinbaseはこれにより現物、先物、オプションの三位一体型サービスを確立する構えである。
CEOブライアン・アームストロングは、取引の統合による効率化と、米ドル連動型ステーブルコイン(USDC)の活用による安定収益モデルの構築を掲げている。2025年Q1決算では、取引収益が18.2%増の13億ドルに拡大し、個人投資家の取引高も前年同期比で39%増加するなど、プラットフォームの活性化が確認された。
一方で、前四半期比では取引量が個人で17%減、機関投資家でも8.7%減と、短期的な後退も見られる。Deribit買収は、こうしたボラティリティの中で新たな収益軸を確保する試みといえる。さらに、Coinbase Oneを含むサブスクリプション収益が前年同期比36.3%増の6億9,810万ドルと拡大しており、継続課金モデルの定着も見て取れる。
経営陣は、今後の展望として、クロスセル機会の強化と調整後EBITDAの向上を掲げており、同社の収益構造は明らかに転換期を迎えている。中長期的に見れば、今回の買収はCoinbaseの事業基盤強化と収益安定化に寄与する可能性が高い。
株価400ドルを巡る見解の分岐と市場の温度感
Coinbase株の今後について、アナリストの評価は大きく割れている。Barclaysのベンジャミン・バディッシュ氏は目標株価を202ドルに引き上げつつも「イコール・ウェイト」を維持し、JPMorganは215ドルに引き下げて「中立」評価を継続した。
Keefe, Bruyette & Woodsも205ドルを提示しており、全体としては慎重なスタンスが目立つ。主な懸念材料は、取引手数料率の低下と機関投資家の取引活動の鈍化にある。CFOアレシア・ハースは、第2四半期初頭におけるブロックチェーン報酬およびサブスクリプション収益の伸び悩みにも言及しており、楽観視できる状況ではない。
一方、Canaccord Genuityのジョセフ・ヴァフィ氏は400ドルという強気な目標株価を堅持している。ヴァフィ氏は、Coinbaseのインフラストラクチャ・アズ・ア・サービス(IaaS)モデルが新たな成長エンジンになると評価しており、これが株価上昇の根拠とされている。
現状、Coinbase株は過去最高値からは乖離しているが、1か月で18%の反発を記録するなど、市場の一部には回復期待も根強い。アナリスト26名のうち「強く買い」が9名、「やや買い」が1名と、一定のポジティブ評価も維持されており、ウォール街全体では「モデレート・バイ」がコンセンサスとなっている。市場の温度感は二極化しており、400ドル達成を語るにはさらなる進捗が必要とされる。
Source:Barchart