Amazonは2025年5月、FedExとの大型荷物配送に関する複数年契約を締結し、2019年以来6年ぶりに両社の提携を再開した。背景にはUPSが年内にAmazon向け配送量を半減させる方針を示したことがあり、これを受けてAmazonは配送網の分散強化を進めている。Amazonはこの契約をUPSの代替とは位置づけておらず、自社のラストマイルネットワークやUSPSと並ぶ第三の選択肢としてFedExを加える狙いがある。
UPSは低利益率の取引からの脱却を図る中で、長年の大口顧客であるAmazonとの関係縮小を選択。FedEx側もAmazon向けの住宅配送に特化した契約を「双方にとって利益がある」として歓迎する姿勢を示している。かつての契約解消を経て、両社の再提携はEC市場の構造変化を映す象徴的な動きとなる。
FedExとの再提携が意味するAmazonの物流戦略の変化

AmazonがFedExとの大型荷物配送契約を再開した背景には、単なるパートナー選定の見直しではなく、物流ネットワーク全体の再構築という中長期的な視点がある。UPSが2025年末までにAmazon向け取扱量を半減させる方針を明かしたことが契機となったが、Amazonはこの事態を単なる供給先変更にとどめず、複数のサードパーティーパートナーを組み合わせた柔軟な体制へと移行している。FedExは今後、UPSやUSPSと並ぶ第三の柱として機能し、大型商品の住宅配送を担う。
一方、FedExは2019年にAmazonとの地上配送および速達契約を終了して以来の再契約となるが、その理由にはeコマース市場への再接近という現実的な判断があったと見られる。特定の大型荷物に限定された契約内容にすることで、FedEx側は他の事業とのバランスを保ちつつAmazonとの取引を再開できる体制を選んだ。2019年当時とは異なる業界構造とAmazonの自社配送拡充により、再提携は過去の延長線ではなく新たな協業モデルの出発点といえる。
UPSの脱Amazon戦略と収益モデルの転換
UPSがAmazonへの依存を意図的に縮小する方針を打ち出した背景には、低利益率取引からの脱却という明確な収益構造の見直しがある。2024年1月に発表された計画では、年内にAmazon向けの取扱量を半減させ、より利益率の高い取引への転換を加速させるとされた。これは、Amazonによる配送の内製化が進行する中で、ボリューム重視から品質重視への方向転換を示すものであり、短期的な売上減を覚悟しても利益率を優先するという経営判断がうかがえる。
この動きによりUPSは、EC分野における価格競争から距離を取り、医療やBtoBといった高付加価値領域へのシフトを視野に入れている可能性がある。Amazonとの関係は、かつては物流網の中核をなしていたが、現在では収益面での負担となりつつあると判断したものと考えられる。UPSがこのように大型顧客から離れた場合、短期的には業績にブレが生じるが、長期的には利益率向上という明確な成果につながる可能性もある。
分断から協調へと転じたFedExとAmazonの新関係
FedExは2019年にAmazonとの契約を一方的に終了し、当時は「より広範なeコマース市場への注力」が理由とされていた。だが、今回の再契約により、FedExもAmazonとの協調路線へ舵を切り直した形となる。これは、配送市場全体が再編される中で、Amazonを完全に排除する戦略には持続性がないと判断した結果とみられる。今回の合意内容が「住宅配送向けの特定大型荷物」に限定されている点からも、過去とは異なる協業の形を模索していることが読み取れる。
FedExにとってこの契約は、Amazonの自社配送がカバーしきれない領域を補完する形となり、リスクを抑えつつ収益性の高い案件に特化できる利点がある。また、Amazonも独自ネットワークの限界を補うために、特定の機能を外部委託することで柔軟性を確保しようとしている。両社の再提携は、単なるビジネス判断というよりも、市場変化に適応するための現実的な再構築の一環と捉えるべきである。
Source:PYMNTS.com