テスラ(TSLA)は中国での納車台数が前年同月比6%、前月比では約26%減少し、市場シェアも3.2%にまで縮小した。BYDの台頭やモデルの陳腐化、現地ブランド志向の高まりが背景にある。こうした中でも、米中関税の一時停止措置を受けて投資家心理は一時的に改善し、株価は6%超の反発を見せた。
ただし、販売不振の構造的要因は依然として解消されておらず、新モデル投入やブランド刷新がなければ巻き返しは困難との見方がある。テスラ株は将来性への期待で評価されているが、利益や売上の実態との乖離が広がる中、持続的上昇には限界があると判断される。
中国市場での納車低迷とシェア縮小の実態

テスラは2025年4月において中国市場で58,459台を販売し、これは前年同月比6%減、前月比では25.84%の落ち込みを示した。また、リテール販売に限ると28,731台にとどまり、前年同月比8.56%減、前月比61.24%減と著しい減速が見られる。
最大の海外市場である中国でのこの失速は、同社の世界的な成長戦略において大きな懸念材料となる。競合他社のBYDは同月268,778台を販売し、29.7%の市場シェアを確保しており、テスラの中国における新エネルギー車シェアは3.2%まで落ち込んでいる。これは前年の4.6%、前月の7.5%から大きく後退した数値である。
こうした現象の背景には、テスラの現行モデルの陳腐化や、急速充電技術などにおいてBYDなどの中国企業に後れを取っている現実がある。さらに米中関係の緊張を背景に、中国国内で非国産メーカーに対する需要が後退している可能性も否定できない。こうしたファンダメンタルズの悪化は一時的な関税緩和によって相殺されるものではなく、販売台数の反転には抜本的な戦略転換が必要とされる。
株価急騰の裏に潜む不安定な成長ストーリー
米中による90日間の関税猶予合意が発表されると、テスラ株は即座に6%超上昇し、再び時価総額1兆ドルの大台に近づいた。しかしながら、こうした反発は地政学的ニュースに反応した短期的な市場心理に過ぎず、企業の実態とは乖離している。第1四半期の業績は低調であり、販売不振が続く中、PERは調整後予想利益の156倍、PSRは売上高の9.8倍と著しく割高な評価が続いている。このような水準での株価は、現実の業績改善を伴わなければ持続可能とは言い難い。
投資家の一部は「ロボタクシー」や「オプティマス・ロボット」といった未来構想に期待を寄せているが、これらは未だ収益化の確証がない領域であり、現時点では株価の正当化材料にはなり得ない。中長期的には競合の台頭とイノベーションの遅れがブランド価値に影響を及ぼす懸念もある。現状の株価水準は過度な期待先行であり、慎重な評価が求められる局面にある。
Source:Barchart.com