時価総額9,800億ドルの半導体大手Broadcomは、AI関連需要の急拡大により、2024年度第1四半期に過去最高の149億ドルの売上を記録した。調整後EBITDAは41%増の101億ドル、AI関連売上は前年同期比77%増の41億ドルに達し、ハイパースケール顧客による高性能アクセラレータ需要が拡大している。

第2四半期もAI関連収益は前年比44%増を見込み、ソフトウェア部門はVMware買収を追い風に47%成長した。一方、ワイヤレスやエンタープライズネットワーキング分野は低迷が続く。ブレイン・カーティス氏を含む複数のアナリストがAVGO株の目標価格を300ドルと設定しており、長期的には業績と株価の双方に上昇余地が残されていると見られる。

AIインフラ需要がBroadcomの業績を牽引 次世代アクセラレータに注目集まる

Broadcomは2024年度第1四半期において149億ドルの売上を記録し、前年同期比25%の成長を達成した。この業績の中核にはAI関連分野の著しい伸長がある。特に、AI事業における売上は41億ドルに達し、前年比で77%の増加を示した。これは、ハイパースケール顧客による高性能アクセラレータやAIクラスタへの投資が加速していることに起因する。同社は、現在取引のある3社のハイパースケール顧客に加えて、4社の新規パートナーとの開発にも着手しており、サービス可能市場は2027年度までに最大900億ドルに達する可能性があると見積もっている。

AI以外の半導体分野では、ワイヤレス関連事業が季節的要因によって前四半期比で9%減少し、ネットワーキング分野も在庫調整の影響で横ばいにとどまったが、それを補って余りあるAI関連の成長が業績全体を支えている。こうした構造的な需要の変化は、AIがもはや一過性のブームではなく、Broadcomにとって中長期的な成長エンジンとして機能していることを明示している。

一方で、AI事業の持続性と競争環境への適応には慎重な視座が求められる。ハードウェア開発には大規模な資本投入と長期的な技術革新が不可欠であり、新たな顧客獲得と既存顧客の囲い込みが進まなければ、急成長の維持には限界がある。現時点での数値は力強いが、今後の四半期においても同様の勢いが持続するかは注視すべきである。

VMware統合によるソフトウェア事業の拡大とサブスクリプション移行の意義

Broadcomは、VMwareの買収を通じてソフトウェア領域におけるプレゼンスを大幅に拡大している。2024年度第1四半期におけるインフラソフトウェア部門の売上は67億ドルとなり、前年同期比47%の成長を記録した。これは、永続ライセンスからサブスクリプションモデルへの移行、および仮想化サービスのアップセルによるものであり、収益基盤の安定化と拡張性を高める効果があった。VMwareとの統合により、BroadcomはAI対応のフルスタック仮想化基盤の提供能力を強化している点が特徴である。

このような事業構造の変化は、半導体依存型からソリューション提供型企業への進化を象徴している。AIの物理基盤を提供するだけでなく、仮想化ソフトウェアとの連携により、垂直統合的なエコシステムを築きつつある点は、他の半導体企業と一線を画す特徴と言える。特に、VMwareを通じた顧客接点の拡張は、ソフトウェアライセンスの継続的な収益化と、AI・クラウド対応インフラの標準化を促す基盤となり得る。

一方で、ソフトウェア分野の統合には文化的・組織的な課題も伴う。従来型のハードウェア企業にとって、サブスクリプションモデルの導入は業績評価や資金繰りへの影響をもたらす可能性があり、移行の過程における顧客満足度や継続率の管理が鍵となる。したがって、長期的な収益構造の確立に向けて、定着化と差別化の両立が重要となる。

Source:Barchart