Super Micro Computer(SMCI)は最新四半期決算で、純売上46億ドルを記録し前年比19.5%の増収を達成したものの、1株当たり利益が0.66ドルから0.31ドルに急減する結果となり、年初来約9%上昇した株価も52週高値から約67%下落する厳しい状況をさらした。
同社はAIインフラ市場に対応すべく、DCBBSや第2世代液冷技術(DLC-2)を駆使し、エネルギーおよび水使用を40%削減し冷却騒音を50デシベル以下に抑えるとともに、米国内生産体制の拡大に踏み切る構造改革を推進中である。
一方、JPMorganは中立評価を示し、Nvidia向け在庫の評価懸念や物流問題、過去の経営実績への疑念が投資判断に影を落とす中、各アナリストの評価は買いと売りが交錯し、今後の展開に慎重な姿勢を示している。
第3四半期決算が示した成長鈍化と市場の期待との乖離

Super Micro Computer(SMCI)は、第3四半期において純売上46億ドルを計上し、前年同期比19.5%の増収を実現した。AI関連企業としてはまずまずの数字だが、アナリストのコンセンサスを下回ったことが市場に失望感を与えた。特に1株当たり利益が前年の0.66ドルから0.31ドルへと大幅に減少し、投資家心理に影響を及ぼしている。株価もその影響を反映し、年初来で約9%の上昇を維持しつつも、52週高値からは実に67%の下落を記録した。
JPMorganはこれを受け、SMCIに対し「中立」評価を付与した。これは成長可能性とリスクが拮抗している状況を表しており、同社の将来性が確信に満ちた評価には至っていないことを意味する。特筆すべきは、同社が過去の上場廃止リスクや監査問題といった障害を乗り越えてきた実績を持つにもかかわらず、今四半期も市場期待を裏切る決算となった点である。
企業の本質的価値を左右するのは一時的な収益の上下ではなく、持続的な収益力と市場との整合性である。今回の決算は、SMCIが依然として高成長分野に位置しながらも、外部期待に応えきれていない現状を浮き彫りにしたものであり、今後の改善が不可欠である。
Nvidia依存と新技術への投資がもたらす財務リスクと競争優位
SMCIの中長期戦略の核となっているのは、AIデータセンターインフラ市場への転換である。同社は「Data Center Building Block Solutions(DCBBS)」や「第2世代液冷技術(DLC-2)」といった先進的な技術を軸に、冷却効率やエネルギー消費の最適化を図り、インフラ構築の短縮化を実現している。DLC-2においては、水と電力の使用を40%削減し、騒音レベルを50デシベル以下に抑えることが可能とされており、導入企業にとっては大きな利点となる。
一方で、この構造転換には財務的な負担が伴う。とりわけリスク要因として浮上しているのが、同社がNvidiaのGB200システム向けに大量の在庫を積み上げていた点である。だがNvidiaは最新のGB300プラットフォームへと移行しており、GB200仕様の在庫は互換性を欠く可能性がある。このような事態は、在庫評価損や追加的な改修費用につながりかねず、短期的な財務安定性に悪影響を及ぼすリスクをはらんでいる。
こうしたリスクを管理しながらも、同社が今後米国内製造を拡大しようとしていることは、地政学的リスクや供給網の強靭性を評価する上で有意義である。短期的な不安定さを内包しつつも、AIインフラ全体を一括提供できる体制が確立されれば、中長期的な競争力の源泉となり得る。
分かれるアナリストの評価と今後の株価形成要因
SMCIに対するアナリストの見解は大きく割れている。調査対象となった15人のアナリストのうち、「強気買い」が4人、「中立買い」が2人、「ホールド」が7人、そして「強気売り」が2人と、評価が分散しているのが現状である。平均目標株価は44.37ドルとされ、これは現在の株価から約33%の上昇余地を示唆する数字ではあるが、これが裏付けのある上昇かどうかには慎重な姿勢が必要である。
この評価の背後には、過去のガバナンス問題やスキャンダルによる企業イメージの低下がいまだ尾を引いていることも挙げられる。さらに、マクロ経済環境の不確実性、物流面の制約、在庫リスクといった外的要因も、投資判断に複雑性を加えている。とりわけ、成長分野であるAIインフラ市場において、競合他社が台頭する中での差別化戦略の明確さが今後の評価を左右する可能性がある。
株価の反発には、収益予想の上方修正や製品展開の確度ある成果が求められる。新技術への投資は評価されるものの、それが業績に結びつくタイミングや確度が見極められない限り、市場は慎重姿勢を崩さない。したがってSMCIの今後の株価形成は、成長期待とリスク管理のバランスの中で、いかに信頼を再構築できるかにかかっている。
Source:Barchart.com