TSMCは2025年第1四半期に264億ドルの収益を記録し、前年同期比42%増という圧倒的な成長を見せた。一方、サムスンはわずか9%の増収に留まり、依然として前年比17%減という厳しい状況が続く。両社の収益差は70億ドルに拡大し、技術開発や製造効率においてTSMCの優位性が改めて浮き彫りとなった。
TSMCとの収益差が示す製造力の歴然たる格差

TSMCは2025年第1四半期に264億ドルの収益を上げ、前年比42%増という圧倒的な成績を記録したのに対し、サムスンは同期間にわずか9%の増収、前年同期比では17%の減収となった。この結果、両社の収益差は70億ドルに達しており、ファウンドリ業界におけるTSMCの優位が改めて明らかになった。収益力の差は単なる売上の違いではなく、製造プロセスの信頼性や歩留まり、顧客の安定した確保能力にも直結している。特にTSMCはアップルやAMDなど、大口顧客の依存度が高く、製造ラインの稼働率を安定的に維持できる構造を築いている。
一方でサムスンは、技術開発のスピードで一定のアピールを見せてきたが、3nmプロセスや2nm開発における歩留まりの課題が障壁となり、実際の製造規模や採用実績で劣後している状況が続いている。数値上の収益差は、そうした技術的・経営的差異の結果といえる。現状ではこの格差を短期的に縮める兆しは乏しく、ファウンドリ事業でのシェア奪還は依然として困難な構図である。
クアルコムの動きがサムスンの2nm技術の評価を左右する
TSMCに代わり、サムスンがクアルコムの次世代Snapdragon製造を受注する可能性が報じられたことで、サムスンの2nmプロセスの信頼性に再び注目が集まっている。Snapdragonシリーズは数億台規模のスマートフォンに搭載されるチップであり、製造委託先の選定は安定した供給体制と歩留まりが大前提となる。これまでクアルコムは主にTSMCの製造力を信頼してきたが、今回の報道はサムスンの製造技術に対する評価が一定の水準に達しつつあることを示唆している。
とはいえ、製造契約が成立したという正式な発表はなく、実際にサムスンが受注するかどうかは現時点で不透明である。仮に受注が実現したとしても、量産初期段階での歩留まりや安定性が不十分であれば、再びTSMCに顧客を奪われる可能性も残る。ただし、もしこのプロジェクトが成功すれば、サムスンは高性能チップ製造における信頼を回復し、再びTSMCと肩を並べる契機となるかもしれない。今後の正式発表と量産の成否が、この勢力図を塗り替えるカギを握る。
アメリカの関税政策が両社の競争構図に及ぼす影響
TSMCとサムスンの競争に新たな変化をもたらす要因として注目されているのが、アメリカの関税政策である。米国が中国や台湾からの半導体輸入に関税を課す動きを見せる中で、両社はアメリカ国内での製造体制確立を急いでいる。TSMCはすでに1,000億ドル規模の米国投資計画を進めており、アリゾナ州の新工場建設を加速させている。一方、サムスンも同様にアメリカ国内での大規模な製造施設の整備を計画しており、関税回避と北米市場での競争力強化を視野に入れている。
この関税政策の影響は、単なる輸出コストの増加にとどまらず、どちらの企業がより早く安定した現地製造体制を築けるかが、今後の受注競争に大きく影響する。もしサムスンがTSMCより先行して米国内での量産を開始できれば、そのコスト優位性を背景に一部の顧客が切り替える動きも起こり得る。ただし、現地化には高度な設備投資と人材確保が不可欠であり、両社ともにリスクとコストを慎重に見極める必要がある。政策の動向と施設の稼働時期が、競争の次なる分水嶺となる。
Source:Android Headlines