Microsoftは2025年5月の「パッチチューズデー」に合わせて、Windows 11バージョン24H2向けの最新アップデートKB5058411をリリースした。最大の注目は、プライバシー問題で一度撤回されたAI機能「Recall」がユーザーによるアプリ別の記録制御やオプトイン形式を備えて再登場した点である。数秒ごとのPC操作スナップショットを記録し、過去の行動を検索可能にするこの機能は、本人認証による保護も導入された。

また、Copilot+ PCには「Click To Do」や強化されたWindows検索、リアルタイム文字起こしに対応する「Narrator」機能も追加された。今回のアップデートは、Build 2025を前にAI強化路線を明確にする動きと見られる一方、セキュリティ更新は抑制的で、アップデートの緊急性は高くないと判断される。

「Recall」機能の再導入に見るMicrosoftのプライバシー戦略転換

2025年5月に提供されたWindows 11バージョン24H2のアップデートでは、過去に物議を醸したAI機能「Recall」が再登場した。RecallはユーザーのPC操作を数秒おきにスナップショットとして保存し、後から検索可能にする機能であり、2024年にはプライバシーリスクを理由に一時撤回されていた。

今回、再導入にあたり、記録対象アプリの選択機能やオプトイン形式の採用、Windows Helloによる認証保護など、多段階の制御策が新たに組み込まれている。この構成により、Microsoftは利用者の操作履歴データへのアクセスに対して慎重な制限を課す姿勢を示した。

本件は単なる機能復活にとどまらず、AIの利便性と個人情報保護のバランスをいかにとるかという課題に対する同社の再定義と捉えられる。Recallが検索対象とする情報には、SNSの画面やブラウザ履歴など私的性質の高いデータも含まれ得るため、ユーザーに明示的な同意を求め、選択的な記録管理を可能とした意義は大きい。これは、Windows 11の利用者層におけるAI機能の定着と、プライバシー保護の双方を両立させるための設計思想の変化とも言える。今後の機能評価は、Recallの有効性に加え、導入後のユーザー信頼の回復度合いにかかっている。


Copilot+ PC専用機能にみるAI統合の深化とUI革新

今回のアップデートにより、Copilot+ PCに搭載されるAI機能が一層強化された。「Click To Do」は、画面上で選択されたコンテンツを文脈的に解析し、適切なアクションを即時提案する機能である。たとえば、画像の選択に応じて「Photosでオブジェクトを削除」や「Paintで背景を除去」などの候補が提示され、操作はWindowsキーとクリック、またはQキーの組み合わせで起動可能である。また、「説明ベースの検索」も追加され、設定やファイルの項目名を正確に記憶していなくとも、「テーマを変更したい」などの曖昧な入力で該当項目が表示されるようになった。

これらの機能は、従来のメニュー依存型インターフェースを脱却し、自然言語や直感的操作によるタスク実行を可能にするものである。特にビジュアル処理においては、生成系AIの文脈推論能力を積極的に取り入れることで、操作工程の短縮やユーザー支援の自動化が図られている。

これにより、Windows 11のAI化は単なる音声アシストや検索最適化にとどまらず、ユーザーの操作習慣全体を再構築する段階へと進みつつある。今後、Copilot+ PC限定機能の範囲拡大が進めば、OSの体験格差が生まれる可能性もあり、AI搭載PCの市場戦略と製品価値の差別化に直結する展開となるだろう。

Source:Laptop Mag