Microsoftは2025年5月のパッチチューズデーにあわせ、Windows 11バージョン24H2および23H2向けにKB5058411およびKB5058405の累積更新を公開した。134件の脆弱性修正に加え、Copilot+ PCを対象としたAI機能「Recall(プレビュー)」や「Click to Do(プレビュー)」を導入し、操作性と検索体験の大幅な向上を図っている。検索精度の向上、写真や文書の意味ベース検索、Phone Linkの連携強化、さらにファイルエクスプローラーのビューモデル刷新も含まれる。一方で、ARM搭載端末でのRobloxの互換性問題は未解決のままとなっている。
RecallとClick to Doが示すCopilot+ PCの進化の方向性

2025年5月のWindows 11アップデートでは、Copilot+ PC向けに導入されたAI機能「Recall(プレビュー)」および「Click to Do(プレビュー)」が注目を集めている。Recallは過去の操作内容を視覚的にスナップショットとして保存し、それを基に迅速な検索体験を可能にするものであり、マルチタスク環境における記憶支援をAIが担う仕組みが導入された。
一方、Click to Doはユーザーが画面上の要素に即座にアクションを実行できるインターフェースで、画像編集やテキスト処理を直感的な操作に落とし込む。これらは「Windowsキー+クリック」や「Snipping Tool」など複数の操作方法で起動可能であり、Snapdragon搭載端末ではジェスチャー操作による起動も実現された。
このように、AIによる機能拡張が単なる自動化に留まらず、ユーザーの行動予測や文脈理解に基づいた能動的な操作補助へと進化していることは注目に値する。ただし、Recallの利用にはスナップショット保存のオプトインやWindows Helloによる本人確認が必要とされ、個人情報保護の観点から慎重な管理が求められる。AI機能の利便性と透明性、そしてユーザー側での制御可能性のバランスが今後の評価を左右することになろう。
意味ベースの検索機能が業務効率をどこまで変えるか
今月のアップデートでは、Copilot+ PCにおけるWindows検索が従来のキーワード依存からセマンティックインデックスを活用した意味ベース検索へと拡張された。これにより、正確なファイル名や文言を記憶していなくても「夏の旅行」や「会議資料」といった自然言語でファイルを探すことが可能となる。
検索対象にはローカルファイルのみならず、クラウド上のOneDriveデータも含まれ、物理的な保存場所にとらわれない横断的な情報アクセスが実現された。また、この検索機能はNPU(ニューラル処理ユニット)によってオフラインでも動作し、40 TOPS以上の性能を背景に応答速度と精度を両立している。
情報検索にかかる手間と時間を大幅に削減するこの設計は、特に膨大な業務資料を扱う現場での効果が大きいと見られる。ただし、AIによる意味解釈が完全にユーザーの意図と一致する保証はなく、検索結果の誤差に対する利用者の許容度が運用実績を左右する可能性がある。AIが補助する環境が整ったとはいえ、利用者側の検索意識や運用方法の最適化も求められる段階にある。
インターフェースの刷新と管理機能の整備が企業導入に与える影響
Windows 11の2025年5月アップデートでは、従来のOS機能を土台としながらも、エンタープライズ領域を強く意識した機能強化が施されている。たとえば、ファイルエクスプローラーには「Pivot-based curated views」が導入され、Microsoft 365との連携を強化することで、業務資料の閲覧と整理を効率化する設計となった。
また、Click to Doにおいては商用環境向けの管理ポリシーも用意されており、企業システム管理者が利用環境を統制しやすい仕組みも整えられた。さらに、スタートメニューからPhone Link機能へのアクセスが強化され、スマートフォンとの連携による業務遂行が一層シームレスとなった。
このように、Windows 11は家庭用OSとしての利便性を保持しつつ、企業導入を前提とした機能整備を進めている。しかし、こうした進化がすべての企業にとって即時のメリットとなるとは限らない。特にAI機能の導入には業務上の統制・監査への影響も含まれるため、利用方針や従業員教育の整備が並行して求められる。OSの機能進化は導入側の体制構築を促す要因ともなり、単なる技術導入にとどまらず、企業運用方針そのものを問う契機ともなる。
Source:BleepingComputer