リゲッティ・コンピューティング(RGTI)は2024年第1四半期決算を発表し、売上高が前年同期比51%減の150万ドルと市場予想を大幅に下回ったことで、株価は10%超下落した。本業に基づかない非現金利益による黒字計上や、売上高に対する236倍という異常なP/S倍率も投資家の懸念を助長している。競合の激化や「量子アドバンテージ」実現までに4〜5年を要するとの経営陣の見解もリスク要因として意識されている。

一方で、ウォール街では同社株への強気見通しが維持されており、アナリストによる平均目標株価は現在水準から約45%の上昇余地を示している。業績と評価の乖離が際立つ中、今後の株価動向には一層の精査が求められる。

量子市場の成長性とリゲッティの業績悪化が示す乖離

リゲッティ・コンピューティングは2024年第1四半期決算において、総売上高が150万ドルにとどまり、前年同期比で51%減と急落した。市場予想の260万ドルを大幅に下回る結果となり、同日株価は10%超下落し、年初来では35%のマイナスとなっている。

この数字は、同社が属する量子コンピューティング市場の将来性とは対照的な短期的業績の停滞を示している。さらに、非現金項目であるデリバティブ・ワラントやアーンアウト負債に関する評価益6,210万ドルが一時的に利益を押し上げている点も、本業の実力を測る上での透明性を損ねる要素となっている。

量子技術の可能性が中長期的に注目される一方で、現時点での収益力は乏しく、同社の評価倍率は異常に高い。236倍という株価売上高倍率(P/S)は、売上の絶対水準に見合わぬ市場評価であり、過度な期待が織り込まれている可能性がある。こうした乖離は、量子技術に対する熱狂と現実の事業進捗とのギャップを端的に示していると言える。リゲッティがこのギャップを埋められるかどうかは、今後の技術商用化の進度に大きく依存するだろう。

競争激化と技術的ハードルが迫る成長路線の不確実性】

リゲッティの事業環境には複数の構造的課題が存在している。CEOスボード・クルカルニ氏が語ったように、量子アドバンテージの実現までには今後4〜5年を要するとの見解があり、商用化のタイムラインが長期にわたることが明言された。この遅延は、投資家にとって収益化までの不確実性を示唆するものであり、短期的な業績改善の道筋が描きづらい状況である。

また、競争環境も過酷である。IonQやD-Waveといった同業他社に加え、GoogleやIBMといったテクノロジー大手が参入しており、リゲッティは技術開発力と資本力の両面で厳しい立場に置かれている。既存の技術優位性を保ちながら差別化を図るには、研究開発の加速と商業モデルの転換が急務となる。一方で、競争の激化は市場形成のスピードを加速させる側面もあるため、リゲッティが機動的に対応すればチャンスを生む余地も残されている。ただし、それは容易な道ではない。

アナリストの強気評価と市場との温度差が映す投資判断の複雑性】

ウォール街のアナリストは、リゲッティ株に対して依然として強気の見方を崩していない。現在のコンセンサス評価は「強い買い」とされており、平均目標株価は約15ドルと、現在の水準から約45%の上昇余地があるとされている。この評価は、量子技術の将来的な社会実装や商業展開に対する中長期的な期待を反映していると考えられる。

しかし、足元の業績や市場環境からは、その期待を裏付ける確たる材料は乏しい。非現金利益による一時的な黒字化、売上の大幅減少、異常に高いP/S倍率など、投資判断におけるリスク要因は依然として多い。アナリストによる強気姿勢と実態との間には明らかな温度差が存在しており、この乖離が今後の投資家心理にどう影響を与えるかは注視が必要である。短期的な値動きに左右されず、長期的視点とファンダメンタルズを重視した冷静な判断が求められる局面にある。

Source:Barchart.com